
「AIが台頭し、地政学リスクが高まり、市場は乱高下する——こんな時代に、伝説の投資家はどう考えるのか?」
オークツリー・キャピタルの共同創業者、ハワード・マークス氏が2026年2月にインタビューに応じ、市場サイクル論からAI・雇用・地政学リスク・資産配分まで、幅広い持論を展開した。
この内容を日本語でわかりやすくまとめつつ、解説していきたいと思います。
- 市場サイクルを動かすのは人間の楽観と悲観であり、400年間変わっていない
- オークツリーの逆張り哲学:「誰もリスクを取りたがらない時」に最も攻撃的になる
- AIは「既知パターンの分析」は得意だが、前例のない事象への対応は苦手
- AIの進化スピードは社会の適応スピードを上回り、雇用ミスマッチが深刻化する恐れ
- 地政学を無視した「純粋な経済合理性」の判断が、長期的なリスクを招く
- 資産配分に万人向けの数値ルールはない。自己認識が出発点
① 市場サイクルの本質——「韻を踏む歴史」と人間心理
マークス氏の投資哲学の根幹は、長年変わらない「サイクル論」にある。
企業や経済は長期的になだらかなトレンドラインに沿って成長する。しかし市場価格は、そのラインの周りを人間の楽観と悲観によって激しく上下する。これがサイクルの正体だ。
1620年のチューリップ・バブル、1720年の南海泡沫事件——歴史は繰り返さないかもしれないが、必ず「韻を踏む」。「手っ取り早く金持ちになりたい」という欲望、「乗り遅れることへの恐怖(FOMO)」。この本能は400年前も今も変わらない。
② AIと投資——強みと限界を正確に見極める
マークス氏は息子の勧めでClaudeなどのAIを実際に活用し、そのデータ収集・論理整理能力の高さに驚いたという。
AIが得意なこと・苦手なこと
| ✅ 得意 | ❌ 苦手 |
|---|---|
| 膨大なデータの整理・構造化 | 前例のない「全く新しい事象」の分析 |
| 仮説の構築と質問の枠組み作り | テールリスクや地政学的断絶への対応 |
| 既知パターンに基づく高速分析 | 過去データが通用しない局面の判断 |
過去のデータで学習するAIは、歴史に類例のない局面への対応が弱い。そのため、AIが導き出した投資仮説を最終的に人間がチェックするプロセスは依然として不可欠だとマークス氏は強調する。
また、インデックス運用の台頭がアクティブ・マネージャーを淘汰してきた流れを、AIはさらに加速させると指摘。真に付加価値を提供できないマネージャーへの淘汰圧力が一層強まる。
雇用への深刻な懸念
マークス氏が特に強調したのが雇用問題だ。AIはもはや単なる「省力化ツール」ではなく、自律的に新たな仕事を設計する段階に入りつつある。
③ 地政学リスク——「純粋な経済論理」の罠
米中AI競争の構図
マークス氏によれば、中国はアメリカにとって歴史上初めての真の経済的ライバルだ。AI開発において、もしアメリカが倫理的懸念から開発の歩みを緩めれば、中国に主導権を握られるリスクがあると指摘する。
これは倫理を無視せよという主張ではない。「倫理的な慎重さ」と「戦略的競争力の維持」のトレードオフを直視せよ、という問いかけだ。
依存関係が生まれるメカニズム
④ 個人の資産配分——「経験則」を捨てよ
「年齢=債券比率(50歳なら株50:債券50)」といった経験則について、マークス氏は明確に否定する。そのような一律ルールは個々人の状況を無視しており、捨てるべきだと述べた。
真に考慮すべき4つの変数
| 要素 | 考慮すべき内容 |
|---|---|
| 年齢・ライフステージ | 運用期間と引き出しタイミング |
| 資産総額・収入 | 損失に耐えられる絶対額 |
| 扶養家族の有無 | 生活費の変動リスク |
| 精神的耐性 | 価格変動に耐えられる「腹の座り具合」 |
特に最後の「精神的耐性(intestinal fortitude)」は見落とされがちだ。
どんなに理論的に正しいポートフォリオでも、暴落時にパニック売りすれば意味がない。
自分がどこまで耐えられるかを正直に見積もることが、資産配分の出発点だ。
当ブログで、何度も繰り返し伝えてきた内容ですね。
各々の投資環境やリスク許容度をよく見極め、それに合う資産配分を構築することが大切です。
⑤ まとめ:不確実な時代の「思考の枠組み」
- サイクルは繰り返す。群衆と同じ方向に動いている時こそ疑え。
- AIは強力なツールだが、前例なき局面では人間の判断が不可欠。
- AIによる雇用ディスロケーションは過去より深刻になる可能性がある。
- 経済合理性だけで考えると、地政学的な脆弱性を見落とす。
- 資産配分に「万人向けの答え」はない。自分自身を深く知ることから始まる。
参考動画
- Howard Marks: TBPN (2026) — YouTube
免責事項
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品・投資手法の推奨・勧誘を行うものではありません。投資にはリスクが伴い、元本が保証されるものではありません。最終的な投資判断はご自身の責任において行ってください。本記事の内容は執筆時点(2026年6月)の情報に基づいており、将来の市場状況を保証するものではありません。
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