
【株式投資と複利】「株は複利で増える」は本当か?誤解と真実をやさしく解説
「株式投資は複利の力で雪だるま式にどんどん増えていく」──こんな話、一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
投資の本やSNS、YouTubeでも「複利の力で資産が爆発的に増える!」という言葉はよく登場します。でも、ちょっと立ち止まって考えてみてください。
実は一方で、「株式投資は本当の意味では複利では増えていない」という意見もあるのです。一体どちらが正しいのでしょうか?
結論からお伝えすると、厳密な意味では「複利」とは言えないけれど、複利に似た効果はちゃんと存在します。これは「複利」という言葉の使い方が人によって違うために起きている、すれ違いのようなものなんです。
この記事では、「複利」という言葉の本当の意味から一緒に整理して、株式投資との関係を、できるだけやさしい言葉で解説していきます。
📌 この記事の結論
- 数学的にきっちりした意味での「複利」は、株式投資には当てはまりません(決まった利率が存在しないため)
- ただし、配当を再投資することや、企業がもうけを事業に再投資することで、複利と同じような効果は得られます
- 「複利で増える」という言い方はたとえ話・実務的な表現として使われていて、まったくの嘘ではありません
- ただし、株式には「ボラティリティドラッグ」という、複利とは逆方向に働く落とし穴もあります(→詳細は別記事で解説)
そもそも「複利」って何?銀行預金で考えるとわかりやすい
複利の意味:「利息にも利息がつく」仕組み
「複利」とは、利息が元のお金(元本)にプラスされて、次の年からはその増えた金額に対してまた利息がつく仕組みのことです。
言葉だけだとピンとこないので、具体的な数字で見てみましょう。銀行に100万円を預けて、年利2%だったとします。
| 年数 | 元本 | 利息(2%) | 合計 |
|---|---|---|---|
| 1年後 | 100万円 | 2万円 | 102万円 |
| 2年後 | 102万円 | 2.04万円 | 104.04万円 |
| 3年後 | 104.04万円 | 2.08万円 | 106.12万円 |
1年目の利息は2万円ですが、2年目は102万円に対して2%がつくので2.04万円になります。「利息にも利息がつく」──このちょっとずつ増える分が、複利の正体です。
💡 複利が成り立つために必要なこと
複利が成り立つには、「あらかじめ決まった利率」が必要です。銀行預金や一部の債券は「年〇%」と最初から決まっているので、複利がきれいに成立します。
「株式投資は複利じゃない」という意見はどこから来たのか
株式には「決まった利率」がない
株式投資が厳密には複利と言いにくい一番の理由は、株には「利率」というものが存在しないからです。
| 比較 | 銀行預金 | 株式投資 |
|---|---|---|
| 利率 | 年0.1%(決まっている) | そもそも存在しない |
| 利息 | 毎年確実にもらえる | 配当がある場合・利回り不確実 |
| 元本への組み込み | 自動でやってくれる | 自動では行われない |
| 増え方 | 計算式どおりに増える | 株価が市場で動くだけ |
たとえば、あなたの持っている株が「100万円 → 110万円」になったとします。これは株の値段(価格)が動いただけであって、「利息が元本に積み上がった」わけではないんです。
銀行預金なら、来年は「110万円 × 利率」で自動的に増えてくれます。でも株は違います。来年その株がいくらになるかは、誰にもわかりません。上がるかもしれないし、下がるかもしれない。市場の気分次第なんです。
株は毎年「ゼロから値段が決め直されている」
銀行の複利は、増えた元本を土台にして次の利息が計算されるから成り立ちます。
でも、株式はちょっと違います。株価は毎日・毎年、そのときの売り買いのバランスや会社の業績を見て、市場が値段をつけ直しているだけなんです。「前年の利益が積み上がって、それが次の利益を生む」という、銀行預金のようなはっきりした構造はありません。
「複利」の厳密な定義からは外れています。
では、なぜ「株は複利で増える」と言われるのか?
理由①:配当を再投資すると、複利に似た効果が生まれる
株式投資でも、もらった配当金でさらに株を買い足していく(再投資する)と、複利と同じような効果が生まれます。
流れを追ってみましょう。
配当をもらう → その配当でまた株を買う → 持っている株の数が増える → 次にもらう配当も増える → またその配当で株を買う……
これ、よく見ると銀行の複利とそっくりですよね。「もらったものを使って元本を大きくし、次のリターンも大きくしていく」という構造は同じです。
S&P500(アメリカの代表的な株式指数)の長期チャートで「配当を再投資した場合」と「配当をもらうだけの場合」を比べると、20〜30年で結果が大きく差がつくのは、まさにこの再投資の効果なんです。
📊 配当再投資の力(イメージ)
S&P500の場合、配当を再投資した方が、ただ配当をもらうだけの場合よりも、長期で見るとかなり大きく資産が伸びることがわかっています。インデックス投資で「複利の力」と言われているのは、実はこの再投資による効果のことなんです。
「じゃあ、銀行の複利と構造が同じなら、これも複利って呼んでいいんじゃないの?」と思いますよね。ここがややこしいところで、増える「仕組み」は似ていても、増える「ペース」が約束されていないのがポイントです。
銀行預金は「来年の利息が必ず2%もらえる」と決まっています。でも株の配当は、会社の業績によって増えたり減ったり、最悪なくなったりします。さらに、再投資するときの株価も毎回バラバラです。
つまり、「配当が積み上がっていく仕組み」はあっても、「決まった利率で増える」という複利の条件は満たしていない。だから厳密には複利と呼ばず、「複利的な効果」「複利に似た効果」と表現されるのです。
理由②:会社そのものが「複利マシン」になっている
多くの優良企業は、稼いだ利益をそのまま株主に配当として全部配るのではなく、新しい店舗をつくったり、研究開発をしたり、設備を増やしたりといったかたちで、また事業に投資していきます。
すると、その投資がさらに利益を生んで、その利益でまた投資して…と続いていきます。「利益 → 事業に再投資 → さらに利益」というサイクルです。
有名な投資家のウォーレン・バフェットさんがよく口にする「複利マシン」という言葉は、まさにこのことを指しています。配当を出さずに、利益を会社の中にため込んで再投資し続ける企業は、何十年というスパンで見ると、複利のように成長してきた例がたくさんあります。
理由③:年平均成長率で表すと「複利っぽく見える」から
投資のリターンを語るときによく出てくるのが、年平均成長率という指標です。これは「もし毎年同じ%で増えていったとしたら、何%ずつ増えていったことになるか」を計算したものです。
たとえば「S&P500の過去30年の年平均成長率は約10%」と言われたりします。でもこれは「毎年きっちり10%ずつ増えた」という意味ではありません。実際は、+30%の年もあれば、−20%の年もある、ジグザグの動きをしています。
ただ、年平均成長率を使ってグラフを描くと、まるで「複利でなめらかに増えていった」ような美しいカーブが描けるんです。だから「株式は複利で増える」というイメージが広まりやすい。表現としては嘘ではないのですが、銀行預金のような「決まった複利」とは別物だということは知っておきたいポイントです。
⚠️ もうひとつ、知っておきたい「複利の落とし穴」
ここまで「株式投資には、厳密な複利ではないけれど、複利に似た効果がある」というお話をしてきました。
ただし、株式投資には複利と「逆方向」に働く力もあるのです。それが 「ボラティリティドラッグ」 と呼ばれる現象。
これは、値動きが激しいほど、計算上のリターンと実際に手元に残るお金がズレてしまうという、長期投資ではかなり重要なポイントです。
この話は少し深いので、別記事で詳しく解説しています。本記事を読んで「株と複利」の基本がわかった方は、ぜひ続けて読んでみてください。
まとめ:「株式と複利」の正しい理解
3つの視点で整理してみる
| 視点 | 内容 | 判定 |
|---|---|---|
| 厳密な数学的な複利 | 決まった利率がないので成立しない | ❌ 当てはまらない |
| 配当の再投資 | 配当を再投資することで複利と同じ効果が生まれる | ✅ 複利効果あり |
| 企業の内部成長 | 利益を再投資し続ける優良企業は複利的に成長していく | ✅ 複利的効果あり |
📝 この記事のまとめ
- 「複利」には決まった利率が必要です。株にはそれがないので、厳密な意味での複利は成立しません
- ただし配当の再投資や企業の内部成長を通じて、複利と同じような効果は確かに生まれます
- 「株は複利で増える」という表現はたとえ話・実務的な表現として正しい面もありますが、銀行預金の複利とは別物だと知っておきましょう
- 大事なのは言葉の定義よりも「長期・分散・再投資」という投資の基本原則を理解することです
- そして、複利と逆方向に働く「ボラティリティドラッグ」という落とし穴もあります(→こちらの記事で詳しく解説)
「株は複利で増える」という話を聞いたとき、それが配当再投資の話なのか、企業成長の話なのか、それとも年平均成長率の見せ方の話なのか──そこを区別して考えられるようになると、投資の理解が一段と深まります。
よくネットやSNS上で株式は複利で増える増えるというと株式投資は複利じゃないという反論がされているのを目にします。僕はどっちの視点もわかるのですが、
個人的には無難な言い回しとしては「複利的な効果」とか「複利のような」働きがあるそういうニュアンスの言葉を使うとまるいんじゃないかなと思います。
いずれにしても、曖昧なまま、なんとなく知ってるつもり、わかってるつもりになって、投資を知ってると思い込むよりは、うわべの言葉ではなく、基本や常識を仕組みと理屈から理解する。それが、投資を勉強するうえで大切だと思います。
他人には寛容さを持ちつつも、自分はしっかりと学ぶ。抑えるべき基本・常識はしっかりと抑える。この姿勢が脱初心者への第一歩だと私は思います。
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