おはようございます。今日は、SNSでよく見かける議論について少し書いてみたいと思います。


「オルカン(全世界株式インデックス)一本でOK」「現金なんて持っているだけ損」──こうした意見を目にすることが増えました。

確かに、長期・分散・低コストという観点で、オルカンやVTはとても優れた商品です。私自身もコア資産として活用しています。

ただ、ここで一つだけ立ち止まって考えてほしいことがあります。

オルカンを「現金の代わり」「ほぼ元本割れしないもの」と思っていませんか?

もしそう感じているなら、今日の記事はぜひ最後まで読んでみてください。

リスク許容度がとても高い方や、すでに十分な資産をお持ちの方が「オルカン100%でいい・現金みたいなもの」と言うのは理解できます。

けれど、リスク許容度の低い方や一般的なごく普通の家計にとっては、そう単純な話ではないかもしれません。

そもそもオルカンはどれくらい下落するのか?

「全世界に分散しているから、そんなに下がらないでしょ?」と思っている方も多いかもしれません。データで確認してみましょう。

① VT(全世界株式ETF)のドローダウン

VTは2008年に設定された、全世界の株式に投資できるETFです。設定来のドローダウン(高値からの下落率/ドルベース・配当込み)を見てみると──

  • 2009年以降の約11年間で、10%以上の下落が9回
  • そのうち 20%以上の下落が2回
  • 2012年前後は、下落から最高値を更新するまでに 1年以上 を要した局面も
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VTのドローダウンチャート(2008年〜)

「全世界に分散しているから安心」というイメージとは、少し違って見えませんか?

もし、いざ自分がお金が必要な時にこの暴落とタイミングが合うと目も当てられません、
暴落のタイミングは分かりませんし、株式市場はあなたの都合など考慮してくれるはずもありません。

② 期間を伸ばした「疑似オルカン」のドローダウン

VTは歴史が浅いため、より長期で見るために、米国株55%+米国株を除く全世界株式45%という配分で疑似的に全世界株式(オルカン)を再現してみました(60:40でも結果はほぼ同じです)。


1986年以降のデータで見ると、こんな下落がありました(ドルベース)。

  • -40%、-50%を超える下落も発生
  • 元本回復までに数年かかった時期も複数あり

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疑似オルカンの長期ドローダウンチャート(1986年〜)

為替リスクも忘れずに

近年は円安が追い風になっていますが、為替は逆に働くこともあります。実際、リーマンショック時には円高が同時進行し、円換算ベースでは下落をさらに深刻化させました。

💡 リスクを考えるときは、楽観シナリオではなく、「為替が不利に働いたケース」を前提に置いておくほうが安全です。

別記事 『為替リスクを忘れるな|円建てで見るS&P500の"本当の"ボラティリティ|

歴史が示す「株式の長期低迷」

「下がってもすぐ戻るでしょ?」というのも、よくある思い込みです。歴史を振り返ると、株式市場には長期にわたって低迷した時期が確かに存在しました。

  • 米国株(S&P500):1929年の世界恐慌後、実質ベースで高値回復までに約25年(配当込みも約15年)
  • 日本株(日経平均):1989年末の高値を更新するまで、実に約34年
  • 米国の「失われた10年」:2000年〜2010年のS&P500のトータルリターンはほぼゼロ〜マイナス圏

「長期で持てば必ず勝てる」というのは、過去の米国株の成功体験に依存した側面もあります。Dimson・Marsh・Stauntonによる長期データ研究(『Triumph of the Optimists』/Credit Suisse Global Investment Returns Yearbook)でも、国によっては株式の実質リターンが数十年単位でマイナスだったケースが報告されています。


「現金のつもり」で持っていると、何が起きるか

もし大きな下落や長期低迷の時期と、自分のライフイベントが重なってしまったら──

  • 子どもの学費
  • 結婚や住宅購入
  • 事故や病気での急な出費
  • 失業・収入減

こうしたタイミングでお金が必要になったとき、特に次のような方は厳しい状況に追い込まれる可能性があります。

  1. 自分のリスク許容度を超えて投資している方
  2. 無リスク資産(現金・預金・債券)の代わりのつもりで全世界株を持っている方
  3. リスク・リターンを楽観的に見積もって資金計画を立てている方

株式を底値圏で売らざるを得ない状況。狼狽して投資をやめてしまうなんて状況。

──最も避けたい事態の一つです。


オルカンも預金も「役割」が違うだけ

誤解しないでほしいのですが、私はオルカンを否定しているわけではありません。むしろ、低コストで全世界に分散できる素晴らしい商品だと思っています。

大切なのは、それぞれの特性を理解することです。

項目 預金・現金 全世界株式(オルカン等)
元本原則維持される大きく変動する
短期の値動きほぼゼロ±数十%あり得る
長期の購買力インフレで目減り長期的には増える傾向(保証なし)
必要時の換金いつでも額面通り下落中なら損失の可能性

つまり、預金とオルカンは特性が全く別物であり、どちらが優れているという話ではなく、役割が違うだけなのです。


まとめ:正しく理解して、長く付き合うために

  • 全世界株式でも、-40%〜-50%の下落は普通に起こりうる
  • 回復までに数年〜数十年かかることもある
  • 為替は有利にも不利にも働く。悲観シナリオで備えるのが賢明
  • オルカンはリスク資産であり、現金や預金のような無理スク資産の代わりにはならない
  • 生活防衛資金や近い将来使うお金は、現金や預金で確保する

「オルカン最強」も「オルカン危険」も、どちらも一面的な話です。大切なのは、メリットと弱点の両方を理解したうえで、自分のリスク許容度とライフプランに合った資産配分を組むこと。

長く投資を続けるためにこそ、現金とのバランスを大切にしていきたいですね。

それでは、今日も良い一日を。

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