
「もし買った直後に大暴落が来たら?」── 過去4つの危機直前から投資した場合のリアルな結末
これから投資を始めようとしている人が、必ず一度は思うことがあります。
「もし、自分が買った瞬間にリーマンショックみたいな大暴落が来たらどうしよう…」
「人生で一番運の悪いタイミングで投資デビューしてしまったら、もう取り返しがつかないのでは?」
この不安は、投資を始める前のほぼ全員が抱える「最大の心理的ハードル」です。実際、これが原因で何年も始められないまま過ごしてしまう人も多くいます。
でも結論を先に言うと──
過去4つの大暴落(日本バブル崩壊・ITバブル崩壊・リーマンショック・コロナショック)の直前に投資を始めた人ですら、適切な投資先を選んでいれば、長期では大きくプラスになっている。これはニッセイ基礎研究所の井出真吾氏が、9つの主要インデックスで詳細に検証した結果です。
今回は、このデータをベースに「最悪のタイミング」で投資を始めた場合のリアルを、丁寧に検証していきます。
結論:暴落直前デビューでも、投資先を間違えなければ報われる
✅ 過去4つの危機直前に一括投資したとしても、米国株や先進国株ならすべての期間で年率6%以上のプラスリターン。積立投資ならなおよい結果に
✅ 日本バブル直前にナスダック100へ100万円一括投資 → 32年後に6,115万円(60倍超)
✅ ただし日本株一極集中だけは別物 ── TOPIXは32年経っても約2倍程度
✅ 鍵は「分散投資」と「長期で続けること」。タイミングではない
1. 検証する4つの「最悪のタイミング」
ニッセイの分析では、日本人にとって馴染みのある4つの金融・経済危機を「投資デビューの最悪タイミング」として設定し、2022年4月末時点までの期間で検証をしました。
| 危機 | 投資開始時期 | 2022年4月末までの期間 |
|---|---|---|
| 日本バブル崩壊直前 | 1990年1月 | 32年4ヶ月 |
| ITバブル崩壊直前 | 2000年3月 | 22年2ヶ月 |
| リーマンショック直前 | 2007年11月 | 14年6ヶ月 |
| コロナショック直前 | 2020年1月 | 2年3ヶ月 |
そして検証対象として、9つの主要インデックスを使っています:
米国株(ナスダック100、S&P500、ダウ平均)/先進国株(MSCIコクサイ、MSCI World)/全世界株(MSCI ACWI)/新興国株(MSCI EM)/日本株(TOPIX、日経平均)
2. 一括投資の結末:「最悪のタイミング」でもこんなに増えた
まず、4つの危機の直前に100万円を一括投資して、2022年4月末まで持ち続けた場合の結果を見てみましょう。
主要なインデックスの最終残高(100万円一括投資 → 2022年4月末)
| 投資先 | 日本バブル直前 (32年) |
ITバブル直前 (22年) |
リーマン直前 (14.5年) |
コロナ直前 (2年) |
|---|---|---|---|---|
| ナスダック100 | 6,115万円 | 約500万円超 | 748万円 | 約170万円 |
| S&P500 | 1,000万円超 | 約400万円 | 約400万円 | 約150万円 |
| ダウ平均 | 1,000万円超 | 647万円 | 約350万円 | 約140万円 |
| MSCIコクサイ(先進国) | 500万円超 | 300万円超 | 約280万円 | 約140万円 |
| MSCI ACWI(全世界) | ─ | 約280万円 | 約260万円 | 約140万円 |
| 日経平均 | 約200万円 | 190万円 | 210万円 | 約130万円 |
| TOPIX | 約100万円前後 | 約170万円 | 約180万円 | 約120万円 |
※ ニッセイ基礎研究所「株価下落直前に投資をする場合、その後どうなる?」(井出真吾、2022年)図表6より、主要数値を抜粋・概算で整理。
注目ポイント①:日本バブル直前ですら、米国株なら大勝
🎯 1990年1月、つまり日経平均が史上最高値38,915円をつけた直後に投資を始めるという、日本人にとって考えうる最悪のタイミング。
それでも、ナスダック100に100万円投資した人は32年後に6,115万円(約61倍)。S&P500やダウ平均でも10倍以上になっています。
「実は「投資先の選択ミス」「日本株への集中投資」が問題だったことが伺えます。
注目ポイント②:日本株一極集中だけは、本当に苦しかった
一方で、日本バブル直前にTOPIXに一括投資した場合、配当込み(トータルリターン)でようやく元本100万円を回復したのが2020年後半〜2021年初頭でした。
⚠️ つまり、バブルのピークで「日本一国に集中投資する」という選択をした場合、30年以上元本割れという事態がリアルに起きていました。
これは「長期投資なら何でも報われる」という単純な話ではなく、地域分散の重要性を示すデータでもあります。
3. 一括投資の途中経過:「含み損地獄」も覚悟が必要
最終的に大きく増えたとはいえ、その道のりは決して平坦ではありません。各危機直前に一括投資した場合、途中で資産がどこまで減ったかを見てみましょう。
| 投資タイミング | 最低残高(100万円→) | 下落率 |
|---|---|---|
| リーマン直前 → 各株式インデックス | 50万円以下 | 約 −50% |
| コロナ直前 → 各株式インデックス | 70〜80万円 | 約 −20〜30% |
| 日本バブル直前 → TOPIX・日経平均 | 20〜30万円 | 約 −70〜80% |
※ 図表8より。最低額に達した時期は、リーマン直前の場合は2009年1〜2月末頃。
でも、「我慢して持ち続けられたか」が分かれ道
注目すべきは、元本割れしていた期間が、投資期間全体に占める割合です。
- 日本バブル直前から米国株:元本割れ期間は投資全期間の2%台
- 日本バブル直前から先進国株:元本割れ期間は20%以下
- 日本バブル直前からTOPIX:元本割れ期間は大半(30年以上)
📈 つまり、米国株や先進国株に投資していれば、たとえ最悪のタイミングで始めても、含み損を抱える期間は人生のごく一部で済んでいました。
一時的に資産が半分になる恐怖を「乗り越えられたか」が、最終的な勝敗を決める分かれ道だったのです。
ここから学ぶ教訓はやはり、無理のない範囲で投資をすること。そして分散投資が大切ということです。
4. 積立投資なら、暴落は「ボーナスタイム」に変わる
では、一括ではなく毎月2万円ずつの積立投資を、同じく4つの危機直前から始めていたらどうなったでしょうか?
積立投資の最終残高(毎月2万円 → 2022年4月末)
| 投資先 | 日本バブル直前 (32年・元本776万) |
ITバブル直前 (22年・元本532万) |
リーマン直前 (14.5年・元本348万) |
|---|---|---|---|
| ナスダック100 | 1億3,076万円 | 3,000万円超 | 約1,500万円 |
| ダウ平均 | 5,000万円超 | 2,000万円超 | 約1,000万円 |
| S&P500 | 4,000万円超 | 1,500万円超 | 約900万円 |
| MSCIコクサイ(先進国) | 3,000万円超 | 1,200万円超 | 約750万円 |
| MSCI ACWI(全世界) | 3,000万円超 | 1,100万円超 | 約700万円 |
| TOPIX | 1,549万円 | 約900万円 | 約500万円 |
※ 図表9より、主要数値を抜粋。
積立は、一括より「年率利回りが高くなる」ことが多い
またこのレポートでは、一般的なイメージと同様員、暴落直前に投資をした場合では、多くのケースで、積立投資の年率利回りは一括投資より高かったという点です
例えばダウ平均に投資した場合、各危機直前から積立を始めた人の年率利回りは、一括投資と比べて:
- 日本バブル直前:ほぼ同じ
- ITバブル直前:積立の方が +2.2% 高い
- リーマン直前:積立の方が +4.7% 高い
- コロナ直前:積立の方が +7.7% 高い
【図表】一括投資と積立投資のリターン(年率利回り、2022年4月末時点)
(注)各ランキングは図表9における順位に基づいています。1989年12月末、2000年2月末、2007年10月末、2019年12月末からの月次データ(円ベース・RI)を使用。ナスダック100の1989年12月末〜2003年8月末まではPIを用いて試算。円換算レートはRefinitiv為替レート。株価指数に直接投資できると仮定し、毎月2万円ずつ積立投資した場合の四捨五入の試算結果です。投資コストや税金などは考慮していません。
(資料)Datastream、Bloomberg、QUICKより作成。
※ ニッセイ基礎研究所「株価下落直前に投資をする場合、その後どうなる?」(井出真吾、2022年)図表10を参照
🎯 なぜこうなるかというと、積立投資では暴落後の安値圏でも淡々と買い続けるため、結果的に「平均購入単価」が下がるからです。
一括投資が「最悪の高値1点」で固定されるのに対し、積立投資は「高値も安値も平均化」される。だから暴落直前デビューには、積立の方が相性が良いのです。
とは言え、株式市場が通常の状態であれば基本的に一括投資の方が良い結果となるケースが多く、バンガードの研究でも、世界の各市場で検証期間の6~7割のケースで、一括投資の方がドルコスト平均法を上回ったが有利という結果となっています。
5. 積立投資のリスク抑制効果は、特に日本株で顕著
日本のバブル崩壊のような時こそ積立投資のリスク抑制効果が際立つという点です。
日経平均に日本バブル直前から投資した場合:
| 項目 | 一括投資 | 積立投資 |
|---|---|---|
| 元本に対する最低残高比率 | 22.3%(資産が1/4以下に) | 49.6%(半分まで) |
| 元本割れ期間の割合 | 95.4%(約30年10ヶ月) | 60.1%(約19年5ヶ月) |
👀 一括投資なら30年以上元本割れという地獄絵図でも、積立なら約19年で回復。
投資先がふるわない時ほど、積立投資の「平均化効果」が活きてきます。
6. このデータから言える、3つの教訓
① 「タイミング」より「投資先の選択」が圧倒的に重要
日本バブル直前という「最悪のタイミング」で投資をしたとでも、同日からナスダック100にも投資していればそちらは61倍となっていました。この場合差を生んだのはタイミングではなく、何に投資したかです。分散投資分の大切さがわかりますね。
この4つのバブルのあとの強さでは、米国株 > 先進国株 > 全世界株 > 新興国株 > 日本株という序列がほぼ一貫して観測されました。ただ、これは4つしか例がないため鵜呑みにはできないでしょう。
② 1国集中はリスク。最低でも「先進国」「全世界」に分散
日本株一極集中で起きた「30年元本割れ」は、決して特殊な事例ではありません。どの国の株式でも、長期低迷する可能性は常にあります。
だからこそ、MSCI ACWI(全世界株)やMSCIコクサイ(先進国株)への分散が、地域リスクへの最も合理的な備えになります。
③ 暴落直前デビューが怖いなら、
過去データでは、暴落直前から始めた場合、積立の方が一括より年率利回りが高くなることが多い。「
繰り返しになりますが、これは大暴落直前という特別なケースの話です。そもそも暴落がいつくるかはわかりません。もし、暴落がわかっているなら投資を先送りにしたり、売りから入るのがいいでしょう。
理屈的にも、過去の確率的にも有利な一括投資。それを怖くない、無理のない範囲で行い、資産配分を整えるのが基本。タイミングがわからないので、現金や無リスク資産や資産配分で備えるのが王道です。
それでも「暴落が怖くて一括できない」なら、もちろん積立を選んでOKです。リスク許容度的には余裕があるのに全く投資をしなかったり、途中でやめるよりはずっとましですから。
むしろ、今回の研究から得るべき教訓は、一括投資をした後に暴落をくらってもそこでそのまま終わらず、低迷した株に積立や追加投資行っていくことで、その後の上昇相場でより早期回復が期待できるという点だと個人的には考えます。
7. それでも残る不安への、現実的な処方箋
① 「下がったら買い増す」と最初に決めておく
暴落時に怖くなって売る人と、淡々と買い続ける人を分けるのは「①リスク許容度を守っているか」そして「②事前の想定」投資を始める前から、下落した時のことをよくイメージ・想定しておくことが大切です。
また、下落シナリオでの行動を先に決めておくとよいでしょう。「30%下落したら積立額を増やす」など、予め決めておきあとは機械的にそれを実行しましょう。
② 一括が怖いなら「分割一括」でもいい。
退職金などまとまった資金がある場合、3〜12ヶ月に分けて投資するだけでも、最悪タイミングへの恐怖は大きく和らぎます。
③ 投資先は「全世界」か「先進国」が無難
具体的にはeMAXIS Slim 全世界株式(オルカン)、eMAXIS Slim 先進国株式、信託報酬が低く、分散も聞いててよいかと思います。S&P500も過去強かったのですが、一国集中のリスクは上記のとおりですのでより分散された方が無難かと思います。
④ 「価格を見ない仕組み」を作る
一括投資をして放置。新NISAで毎月自動積立を設定するなど、口座を見ない。見るのは年1回に決める。普段は投資をしていることを忘れてしまう。これも暴落時の狼狽売りを防ぐ良い手段かと思います。
8. よくある質問
Q1.「過去がこうでも、未来も同じとは限らないのでは?」
そのとおりです。だからこそ、米国一極ではなく全世界株式(MSCI ACWI)への分散がより安全です。米国がこの先50年も世界一であり続ける保証はないですが、世界全体が長期で成長しなくなる可能性は、それよりは低いはずです。
Q2.「コロナショックは特殊例(早すぎる回復)では?」
その通りで、コロナの回復スピードは歴史的に異常でした。より長期停滞をすることは普通にあるので、株価は下がってもすぐに回復するものだという変な教訓を持つのは禁物です。
Q3.「老後や退職直前で暴落が来たら、回復を待てないのでは?」
これは正当な懸念です。年齢が上がるほど債券・現金比率を増やすなど資産配分で備えるのが教科書的な対応です。
Q4.「一括と積立、結局どっちがいいの?」
過去データでは、暴落直前デビューなら積立がやや有利ですが、普通のタイミングなら一括の方が平均的にやや有利とされます。基本は一括投資。心理的負担で続けられないなら積立という選び方でOKです。元手がない方も変に積立やドルコスト平均法に拘らず、都度都度一括投資の方が合理的ではあります。
参考 別記事【一括投資 vs 積立投資】S&P500やオルカンに投資をするならどちらが良いか?結論は間違いなく一括投資!だけど・・】
9. じゃあ、結局どうすればいいのか
- 「最悪のタイミング」を恐れすぎない
過去4つの危機直前デビューですら、米国株・先進国株・全世界株式なら結果プラス。 - 投資先は「全世界」「先進国」」から選ぶ
1国集中は避ける。地域分散は大切。 - 怖いなら一括ではなく積立でも可
暴落直前デビューでも、積立なら一括より早期に回復し、利回りが高くなることも多い。 - 暴落シナリオでの行動を先に決めておく
下落時を事前に想定し、どうするかをある程度決めておけば慌てない。 - 「始めない」という選択肢を消す
過去データの最大の損失パターンは「待ち続けること」。
「人生100年を豊かにするためのお金を効率良く準備したいのであれば、株価の短期的な値動きに一喜一憂し、試行錯誤を重ねて短期売買するよりも、良い株式インデックスを選んで長期投資をして値上がりを待つ方が堅実」
── ニッセイ基礎研究所 井出真吾
📝 この記事のまとめ
- 過去4つの危機(日本バブル・ITバブル・リーマン・コロナ)の直前にデビューしても、米国株・先進国株・全世界株式は結果プラス
- ただし日本株一極集中だけは別物。TOPIX一括は30年以上元本割れだった
- 勝敗を分けるのは「タイミング」ではなく 「投資先の選択」⇒分散投資大切
- 暴落直前デビューでは、積立投資の年率利回りが一括を上回ることが多い
- 特に日本株のような長期低迷時、積立のリスク抑制効果は絶大
そこから皆さんもご存じの通り、日本株も米国株も、全世界株も全て株価があがっています。
長期投資をしていれば辛い時期にぶつかることは当然あるもの。
そこでしっかりと耐えられる範囲で投資をすることが大切ですね。
「最悪のタイミングで始めたらどうしよう」という不安は、誰もが通る道です。
でもニッセイのデータが示しているのは、暴落時に投資を始めても、割と何とかなったいう事実。
分散の効いた良いインデックスを選んで、長く居続ける。これさえできれば、暴落直前デビューですら長期では報われてきました。よく聞く言葉ですが、不完全でもいいから、無理のない資産配分で、良く分散し、早く初めて、長く続ける。それが大切だと予めて思います。
いつもありがとうございます。
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参考データ・出典
- ニッセイ基礎研究所 井出真吾「株価下落直前に投資をする場合、その後どうなる?」(2022年)
第1ページ / 第2ページ / 第3ページ / 第4ページ - 投資信託協会「2020年度投資信託に関するアンケート調査報告書」
- S&P Dow Jones Indices(S&P500の長期リターンデータ)
- MSCI Inc.(MSCI World、MSCI ACWI、MSCIコクサイ等のインデックスデータ)
※ 本記事はニッセイ基礎研究所の公開レポートを参考に再構成・解説したものです。本文中の数値は同レポート図表6・図表9・図表10・図表12等から抜粋・概算で整理しています。教育目的の情報提供であり、特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。過去の実績は将来の成果を保証しません。