
過去10年の米個別株リターン分布(2014〜2023)
― 約80%の銘柄がインデックスに負けていた現実
この記事の結論
・米国市場でも、過去10年で個別株の約8割はS&P500に勝てていない
・市場の富は「ごく一部の超勝ち株」が作っている
・だからこそ、広く分散するインデックス投資が長期では合理的
「集中投資は本当に有利なのか?」最新研究が示す市場の意外な構造
投資の世界ではよくこう言われます。
「優れた企業を見つけて集中投資すれば、大きく儲かる」
確かに歴史を振り返れば、数銘柄への集中投資で巨額のリターンを得た投資家は存在します。しかし近年の金融研究は、この考え方にかなり厳しい結論を出しています。
その代表例が、元ニューヨーク大学准教授でクオンツ運用者の Antti Petajisto による研究※1です。彼は「集中投資ポートフォリオは、平均的にはむしろ市場に負けやすい」と示しました。
※1 Petajisto, A. (2022) "Underperformance of Concentrated Stock Positions" など。集中保有銘柄は中央値で市場をアンダーパフォームし、リターン分布が大きく右に歪む(=ごく一部だけが大勝ちする)ことを示した研究。
株式市場の利益は「ごく一部の企業」が作っている
この問題を理解する上で欠かせないのが、アリゾナ州立大学の Hendrik Bessembinder 教授の研究です。
論文 "Do Stocks Outperform Treasury Bills?"(2018)では、1926年〜2016年までの約90年間、米国上場株 約26,000銘柄を分析しました。結果は衝撃的でした。
- 米国株の約58%は短期国債(Tビル)にすら負けていた
- 多くの企業は長期的に市場平均に勝てない
- 株式市場が生み出した富のほぼ全額は、上位たった4%の企業が作っていた
さらに、1926年以降に株式市場が生み出した純富(約35兆ドル)の半分は、わずか上位約90社が稼いでいた、という結果まで出ています。
過去10年(2014〜2023)の米個別株リターン分布
では、より直近の10年ではどうだったのか。S&P500構成銘柄+ラッセル3000のデータを使って、2014年初〜2023年末のトータルリターン分布を見ると、おおむね次のような傾向が確認できます。
| 区分 | 割合(概算) |
|---|---|
| S&P500(市場平均)を上回った銘柄 | 約20% |
| S&P500を下回った銘柄 | 約80% |
| 10年トータルでマイナスリターンだった銘柄 | 約30〜40% |
| 市場リターンの大半を生んだ上位銘柄 | 上位 約10銘柄(GAFAM+NVIDIA等) |
※ 数値はBessembinder, S&P Dow Jones Indices "SPIVA"、Morningstarなどの公開データを基にした概算。指数算出方法・配当再投資の有無で多少変動します。
つまり、ランダムに10銘柄を選んだ場合、その中にApple級の超勝ち株が含まれない確率の方が圧倒的に高いということです。
市場のリターンを作った代表企業
この10年で米国市場の上昇を牽引したのは、次のような銘柄です。
- Apple(AAPL)
- Microsoft(MSFT)
- Amazon(AMZN)
- Alphabet(GOOGL)
- NVIDIA(NVDA)
- Meta(META)
- Tesla(TSLA)
これらは長期で何兆ドル規模の富を生みましたが、重要なのは「事前に正しく選べたか?」という点です。
2014年時点でNVIDIAを「これから株価が30倍以上になる銘柄」と見抜けた個人投資家は、おそらくほとんどいません。
集中投資が難しい本当の理由
この市場構造があるため、集中投資には次の問題があります。
仮に10銘柄だけに投資した場合、その中に未来の勝ち株が含まれていなければ、ポートフォリオは市場平均を大きく下回ります。
つまり集中投資とは、本質的に 「未来の超勝ち株を当てるゲーム」 です。そして統計的にその的中率は決して高くありません。
インデックス投資が強い構造的な理由
ここで強みを発揮するのが インデックス投資 です。
インデックスは市場全体を保有するため、
- 負け株も含まれる
- 平均的な企業も含まれる
- そして超勝ち株も必ず含まれる
株式市場では超勝ち株のリターンが極端に大きいため、それを取り逃さないことこそがリターン獲得の鍵になります。
分散投資は「リスクを下げる手段」と語られがちですが、近年の研究では リターンの観点からも合理的 と結論づけられています。
個人投資家への実践的な示唆
- 個別株中心の運用は、勝率2割のゲームと認識する
- コア資産は S&P500・全米株(VTI)・全世界株(VT) などの広範なインデックスに置く
- 個別株を持つなら、コア・サテライト戦略のサテライト(10〜20%程度)に留める
- 「当てる」より「取り逃さない」を意識する
まとめ:投資の本質はとてもシンプル
・しかし、その企業を 事前に見つけるのは極めて難しい
・だからこそ 広く分散して市場全体を持つ 戦略が、長期投資において最も合理的
派手さはありませんが、これが過去90年と直近10年のデータが共通して示している答えです。
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参考文献
- Bessembinder, H. (2018) "Do Stocks Outperform Treasury Bills?" Journal of Financial Economics
- Petajisto, A. (2022) "Underperformance of Concentrated Stock Positions"
- S&P Dow Jones Indices "SPIVA U.S. Scorecard"