バフェット銘柄を買えば勝てる?
データで検証する「投資の神様」の真実
世界一の投資家、ウォーレン・バフェット氏。
その投資哲学に関する書籍や記事は数えきれないほど存在します。
「バフェット銘柄を真似すれば勝てる」──そう信じている投資家も多いのではないでしょうか。
しかしデータを丁寧に見ていくと、私たちが抱くバフェット像と、実際の行動の間には意外なギャップがあります。
本記事では、学術研究と実際の保有データから、バフェット氏の「本当の強み」と、私たち個人投資家が学ぶべき教訓を探ります。
バフェット氏の投資術に憧れる投資初心者〜中級者。「バフェット銘柄を買えば本当に勝てるのか?」をデータで知りたい方向け。
本記事はバフェット氏を批判する意図は一切ありません。むしろ筆者は氏の大ファンです。本記事の趣旨は「氏の投資術の本質を正しく理解しよう」というものです。
はじめに:私もバフェット氏の大ファンです
まず最初にお伝えしておきたいのは、私自身がウォーレン・バフェット氏の大ファンだということです。
関連書籍を何冊も所有していますし、個別株投資をしていた頃はバフェット氏の投資哲学を強く意識していました。インデックス投資へと舵を切った今でも、彼への尊敬の念は変わりません。
本記事は、そんな尊敬する投資家の手法を「神格化」せず、データに基づいて正しく理解するための記事です。
第1章:「バフェット銘柄」を買えば本当に勝てるのか?
投資初心者が陥りがちな思い込み
バークシャー・ハサウェイのポートフォリオに組み入れられた銘柄は「バフェット銘柄」と呼ばれ、こんなイメージで受け止められがちです。
- 長期的に高いリターンが期待できる
- 優良企業のお墨付き
- 長く持っていればS&P500を上回る
投資初心者の中には、バフェット氏の銘柄を追いかけて投資したり、自分の保有銘柄にバフェット氏が投資したことで「勝ちを確信」する方も少なくありません。
データが示す意外な事実
しかし、実際のデータは少し違う姿を映し出しています。
1998年以降、バークシャーが投資した173銘柄のうち、2020年末時点で上場している127銘柄を調査した結果がこちらです。
| 取得時から2020年末まで保有した場合 | 銘柄数 |
|---|---|
| S&P500に勝った | 47銘柄 |
| S&P500に負けた | 80銘柄 |
約63%の銘柄がS&P500に負けているという結果になりました。
「バフェット銘柄=長期投資で必ず勝てる」というイメージは、データに基づくと必ずしも正確ではない、ということが見えてきます。
第2章:学術研究が明かすバフェット氏の「強さの正体」
有名論文「Buffett's Alpha」
2013年に発表された有名な論文「Buffett's Alpha」では、バフェット氏の成功要因が学術的に分析されています。
Frazzini, A., Kabiller, D., & Pedersen, L. H. (2018). "Buffett's Alpha". Financial Analysts Journal, 74(4), 35–55.
※初出は2013年のワーキングペーパー。
著者らが発見したバフェット氏の特徴は以下の通りです。
- 保険業からの安価なレバレッジ(およそ1.4〜1.7倍)を活用できる
- 低ベータ・割安・高クオリティの大企業を選好している
論文の最も興味深い発見
同様の特徴を持つ企業は優れたパフォーマンスを上げる傾向があり、それはバフェット氏が買った銘柄に限らない。
翌年の続編論文では、市場ベータ・サイズ・バリュー・モメンタム・クオリティといったファクターで、バフェット氏のパフォーマンスのほとんどを説明できると結論づけています。
グレアムやバフェット氏は、何十年も前から「割安で質の高い企業」に投資する手法を実践してきた先駆者。
ただ、同じ特徴を持つ優良銘柄は世の中に多数あり、必ずしも「バフェット銘柄でなければダメ」というわけではないのです。
実際、モンスタービバレッジやドミノピザのように、バフェット銘柄以上のリターンを残した銘柄もたくさん存在します。
第3章:意外と知られていない「保有期間」のデータ
「永久保有」のイメージと実際
バフェット流投資というと「優良銘柄の超長期保有」というイメージが強いですよね。
確かにコカ・コーラやアメリカン・エキスプレスのような長期保有銘柄は有名です。しかし、すべての銘柄を永久に持ち続けているわけではありません。
実際の保有期間データを見てみましょう。
- 1994年以降の株式の平均保有期間:3.88年
- 1998年以降のバークシャー普通株式の平均保有期間:4.5年
1998年以降に投資が明らかになった175銘柄の保有期間内訳がこちらです。
| 保有期間 | 銘柄数 |
|---|---|
| 半年未満 | 39銘柄 |
| 半年〜1年未満 | 13銘柄 |
| 1年以上〜2年未満 | 22銘柄 |
| 3年未満で売却(または保有期間が3年未満) | 94銘柄(全体の53.7%) |
バフェット氏は「永久保有を望む」という発言で有名ですが、これは真に優れたビジネスを発見できた場合の理想であり、すべての投資先について同様に語っているわけではありません。また、投資時に良いことを言っていても、投資判断に間違いがあった場合や、ビジネス環境が変化した場合には、迅速に売却する判断もしています。
第4章:見落とされがちな「売却判断」の巧みさ
売却銘柄の成績検証
1998年から2020年末までに売却済みの132銘柄(上場廃止含む)を検証した結果がこちらです。
| 保有期間中の成績 | 銘柄数 |
|---|---|
| S&P500に勝った | 71銘柄 |
| S&P500に負けた | 61銘柄 |
| 勝率 | 54% |
長期にわたって50%を上回る勝率を維持していることは、十分に評価に値します。
1998年以降に投資し2020年末時点で上場している127銘柄のうち、2020年9月までに売却した81銘柄について、「もし売らずに保有し続けていたら」を検証してみました。
| もし保有し続けていたら | 銘柄数 |
|---|---|
| S&P500に勝っていた | 33銘柄 |
| S&P500に負けていた | 48銘柄 |
| 売却判断の勝率 | 59% |
つまり、「売らない方が良かった」よりも「売って正解だった」ケースの方が多いのです。
これらのデータが示唆するのは、バフェット氏の強みが「優良企業を見つける目」だけではなく、むしろ状況の変化を見極めて適切に売却判断を下す力にもある、ということです。
「買い」と同じかそれ以上に「売り」の判断力に優れた投資家、と言えるかもしれません。
正確な売買日時は公開されていないため、本検証は四半期末時点の保有銘柄報告書(13F)を基にした概算です。あくまで一つの見方として参考にしてください。
第5章:私たちが学ぶべき本当の教訓
バフェット氏のマネをする際の注意点
- イメージと実際の行動のギャップに注意する
- 個人投資家にはマネできない有利な条件(優先株式・ワラント・経営関与など)があることを割り引いて考える
- 安易にバフェット氏の手法をマネしても、S&P500インデックスファンドに勝てるとは限らない
米国個別株投資の初心者へ
「どの銘柄を買うか」を探すことと同じか、それ以上に大切なことがあります。
- 悪い銘柄を避ける力
- 保有している企業の見切りのつけ方
- 自分の投資判断の誤りを認める柔軟性
私自身、バフェット氏のマネをして石油株で利益を出したり、IBMで損をしたりと、色々な経験をしてきました。今振り返ると、買うときの判断より、売り時の判断の方がずっと難しかったと感じます。
第6章:バフェット氏が好きなら、いっそ「バークシャー」を買う
個別銘柄をマネするより、バフェット氏(現在はその後継者)に運用してもらうのが手っ取り早い選択肢です。
バフェット氏の投資哲学が好きなら、安易にマネするよりバークシャー・ハサウェイ株(BRK.B)を買うのも合理的な選択。
近年はGAFAMが牽引する相場で一時的にアンダーパフォームしたものの、直近では再びS&P500を上回る成績を残しています。さすがの一言です。
結論:ほとんどの投資家にはS&P500が最適解
バフェットをイメージだけでマネないように注意する。マネしたいならバークシャーそのものを買うのも手。
買う銘柄を選ばなくていい。保有も売り時も個別株に比べて簡単という意味でも、バフェット氏自身が一般投資家に勧めている通り、低コストのS&P500インデックスファンドを買うのが、ほとんどの投資家にとって米国株にアプローチする最良の方法かもしれない。
株式投資に人生を捧げる覚悟や卓越したスキルを持つ方は別ですが、「普通の」日本の兼業個人投資家が、ウォール街のプロや世界中の凄腕投資家と勝負して継続的に勝つのは極めて困難です。
私の投資スタンス
手間とコストをかけて、取れるかどうかわからないαを狙うより──
- S&P500などのインデックスファンドで株式市場の恩恵を享受する
- 手間とコストを抑える
- その分の力を入金力アップに注ぐ
これが、普通の日本人にとって最も効率の良い方法だと思います。
私はバフェット氏が大好きで、個別株投資も大好きでしたが、今は株式投資に人生を捧げる気はありません。そして、その程度の覚悟で市場に勝つのは不可能だと理解しているので、これからも淡々とS&P500などに投資を続けていきます。
いつもありがとうございます。
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