GPIF四資産均等は本当に最適解か?「物価連動債で十分」という反論まで踏み込む【後編】

前編では、GPIFが累積収益196兆円・年率+4.71%と過去最高水準を更新したこと、そして「目的が違えば真似する必要はない」という論点を整理しました。

後編では、ポートフォリオの中身と、もう一段踏み込んだ批判的視点まで見ていきます。

1. ポートフォリオ:四資産均等の意味

GPIFの基本ポートフォリオは、国内株式・外国株式・国内債券・外国債券を25%ずつ。

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ここで大事なのは、「分からないから均等」ではなく、計算した結果として均等になったということ。

現在の四資産均等が採用されたのは2020年4月の基本ポートフォリオ変更時からです。背景には、世界金融危機以降の歴史的な低金利環境があり、従来の「国内債券35%・外国債券15%」では運用目標を満たせなくなった、という事情がありました。

各資産のリスク・リターン・相関を推計し、5%刻みの組み合わせから、運用目標を満たし条件付平均不足率が最小となる配分を選んだ結果が、たまたま「25%ずつ」だったわけです。

世の中には「将来は誰にも分からないから均等に持つのが合理的」という1/N型ポートフォリオ理論もありますが、GPIFの四資産均等はこれとは別物。各資産のリスク・リターン・相関を推計したうえで、計算の結果として25%ずつになっただけです。

言い換えれば、「未来永劫25%ずつが正解」というわけでもないということです。

環境が変われば配分も変わる。実際、GPIFの過去の配分は今と全く違いました。

【参考 2006~2009年度】
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【2010~2014年度】
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「四資産均等バランスファンドを買えばGPIFと同じ」という発信を見かけますが、GPIF自身が将来この配分を見直す可能性は十分にある点には注意が必要です。


2. GPIFが置いている期待リターン・リスクの前提

GPIFが基本ポートフォリオ策定時に使った各資産の前提は以下の通り(2025年時点 公式サイトより)

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  • 株式の名目期待リターンは7~8%台。SNSでよく見る「年率10%」よりかなり保守的(でも2020年期などはもっと保守的な数字だった。)

個人で資産配分を考えるとき、直近の好調なリターンをそのまま将来計画に当てはめると楽観的になりすぎます。GPIFが使う保守的な数値で逆算するのも良いかと思いますす。


3. "運用が良かった"は結果論ではないか

足元の累積収益が196兆円まで伸びている大きな要因は、

  • 長期にわたる世界的な株高
  • 歴史的な円安による外貨建て資産の評価益

これらの追い風が大きく寄与しています。

では、株式市場が長期低迷した場合や、円高に大きく振れた場合に同じ評価ができるか? 正直、難しいでしょう。

GPIFが公開しているストレステストでも、

  • リーマンショック級の年度損失:-19.4%(概ね70年に一度の発生確率)
  • ITバブル崩壊級の年度損失:-11.4%(概ね7年に一度の発生確率)

と試算されており、単年で20兆〜50兆円規模の評価損が出る可能性は織り込まれています。今が良すぎるだけで、悪い年も普通に来る、という前提は忘れたくないところです。

ただし、累積60兆円超のインカム(利子・配当)が積み上がっている事実は、相場が荒れても基礎収益は出続けていることを意味します。年金基金のように長期で目標利回りを下回る確率を抑えにいく運用にとって、この市場変動の影響を受けにくいインカムの厚みは地味に効いている部分でしょう。

GPIFの強みは「短期の勝ち負け」ではなく、「長期で目標利回りを下回る確率を最小化する設計」。だからこそ、「結果が良かったから良い運用」ではなく「目的に対して合理的だから良い運用」という視点を持っておきたいところです。


4. そもそも論:「物価連動債で十分」という指摘もある

SNSでの賞賛が広がる一方で、もう一段踏み込んだ批判もあります。たとえば高橋洋一氏らがかねてから指摘してきたのが、

年金の本来の目的(賃金・物価上昇への連動)を考えれば、物価連動国債(インフレ連動債)中心の運用で十分達成できるのではないか?

にもかかわらず、リスク資産(株式・外国債券)で運用するから、下落局面で大きな評価損が出るし、運用報酬コストも膨らむ。さらに、運用委託先が事実上の"身内"系運用会社に偏っているのではないか、という疑念もある。

この論点は、「結果が良かったから問題なし」では片付かない部分です。つまり、

  • 本来はもっと低コスト・低リスクで目的を達成できたのではないか
  • 株高・円安の追い風がなければ、「過剰なリスクを取った」と批判される結果になっていたのではないか
  • 運用報酬という「目に見えにくいコスト」が、本来必要な水準より大きくなっていないか

個人的には、すべてを物価連動債で運用するのは現実的ではないと思いますが、「目的に照らして、本当にこの運用構成・コストが最適なのか」という問いを立て続けること自体は健全だと感じます。

SNSでGPIFが持ち上げられているときほど、こういう"そもそも論"を一度はさんでおきたいところです。

個人的にも、運用成績のすばらしさを褒めたい一方で、
より最小リスクでできたのではないかとか、GPIFのオルタナティブ投資の拡大って目標のために必要か?何か仲良しこよしが発動してない(陰謀論・懐疑論)?的な疑問があったりもします。


まとめ

  • GPIFは2025年度第3四半期末で運用資産293兆円・累積収益196兆円・年率+4.71%
  • 「賃金上昇率+1.7%を最低リスクで」という目的に対しては議論の余地があるものの素晴らしい成果
  • ただしその目的が、あなたの資産形成の目的と一致しているとは限らない
  • 個人は預金等でリスク調整できるため、年金基金と同じ配分を真似する必要は薄い
  • 四資産均等は2020年以降の前提に基づく結果であり、未来永劫のPFではない
  • 足元の好成績は株高・円安の追い風が大きい。下落耐性も含めて評価すべき
  • 「物価連動債で十分」という批判もあり。目的・コストへの問い直しは健全

SNSの空気に流されず、安易に真似したりもせず「自分の目的」から逆算した資産配分を考えていきたいですね。

【参考】
GPIF 最新の運用状況
GPIF 基本ポートフォリオの変更について


※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の投資商品や行動を勧誘するものではありません。投資判断はご自身の責任のもとで行ってください。


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