オルカン+S&P500の「二刀流」は本当に分散になる?合計すると米国80%になる事実
近年、全世界株式(オルカン)と米国株式ファンド(S&P500・VTI)を両方持つ「二刀流」投資家が増えています。
この戦略、実際のところどうなのか。資産配分の観点から、二刀流が"あり"な人と"そうでない"人を整理します。
1. オルカンの中身:米国株が6割以上
まず前提として、オルカン(全世界株式)の地域別構成を確認しておきましょう。
浮動株調整後の世界株式市場を反映するオルカンは、米国株式が全体の約6割以上を占めています。
ただし、この比率は時間とともに変化します。
第二次世界大戦後の長期データを振り返ると、日本のバブル期を除いて米国の比率は概ね40〜60%のレンジで推移してきました。現在の状態が絶対的なものではない、ということは注意しておきましょう。
※2枚目の図はCredit Suisse Global Investment Returns Yearbookより
2. 二刀流にすると実際どうなる?
仮に現在のS&P500ファンドとオルカンを50:50で保有した場合、それぞれの内訳を足し合わせると、ポートフォリオ全体の米国株比率はこうなります。
ポイント:ポートフォリオ全体の約80%が米国株式市場、残り約20%がその他の地域になります。
「S&P500とオルカンでより分散しているつもり」になっている方もいるかもしれませんが、実態は米国へより集中(加重)したポートフォリオとなっています。
3. この戦略が「あり」なケース
投資理論・金融工学の観点から考えれば、時価総額加重で全世界株式に分散投資するオルカンは、基礎・基本・教科書的には正解であり、これを無理に変える必要はどこにもありません。
これは私の意見ではなく、多くの先人たちが、現代ポートフォリオ理論やCAPMといった金融理論を積み重ねて導き出したものです。
もちろん完ぺきではなく議論の余地は残るものの、多くのアクティブファンドや投資家が苦戦している所をみると、理論的にも実務的にも、普通の方であればオルカン1本で行く戦略は最適解の一つと言えるでしょう。
ただ、投資家の目的によっては、S&P500とオルカンを持つ二刀流戦略は合理的な選択肢になりえます。
① 意図的に米国を加重したい場合
「今後も米国株が全世界株式を上回るパフォーマンスを出すと予想する」という判断であれば、二刀流には一定の合理性があります。
結果が伴うかどうかは運次第・相場次第なのでわかりませんが、目的と手段は整合しています。
ただ、その場合は「オルカン+S&P500」で調整するのではなく、「米国株式とその他の地域」、例えばVXUSや先進国・新興国に投資をするファンドなどを組み合わせることで、資産配分・比率を調整するのがオーソドックスかと思います。
また、相関の高い似通った資産の比率を数%〜10%単位で微調整しても、投資成果への影響は限定的です。数百〜数千万円規模の運用では、ポートフォリオを細かくいじるコストや手間が見合うかどうか、よく考える必要があります。
② 米国以外の地域を意図的にアンダーウェイトしたい場合
「日本株や新興国の比率はオルカンより下げたい」という明確な意図があれば、二刀流もアリです。
ただし、その場合も、本来は「VTI+VXUS」や「S&P500+先進国除く米国+新興国」のように、地域別ファンドで直接調整するほうがオーソドックスです。「S&P500+オルカン」での調整は、目的に対してやや遠回りな手段になります。
4. この戦略がおすすめできないケース
ケース1:「将来がわからないから分散したい」という場合
リターン・リスク・相関が「全く」わからないという前提に立つのであれば、二刀流よりも各アセットクラスを均等配分で持つことが合理的です。二刀流で米国を80%にまで加重するのは、「米国が有望」という見方を暗に前提にしていることになります。これは目的と手段が一致していません。
シンプルにリターンだけで考えてみても、本当に「米国とそれ以外、どちらが勝つか分からない」と思っているなら、それこそオルカン1本の方が合理的です。
オルカンは時価総額加重で全世界に分散投資するファンドなので、「どこが勝つか分からない」という前提に最も忠実に応える設計になっています。米国が伸びれば米国の比率が自然に増え、新興国が伸びれば新興国の比率が増える。このように変化に自動的かつ柔軟に対応し、未来を予測しなくていいのがオルカンの最大の強みの一つです。
「分からないから両方」と言いつつ、その実は予測し米国に賭けている。個人的にはこういう状態に論理的な矛盾を感じます。
意図的に米国に賭けることは全く否定しませんが、意図せずに(目的に反して)そうなっている方もしばしば見受けられます。後者の方は矛盾しているので、よく勉強してから判断するようにしましょう。
ケース2:「リスクを下げたいから」という場合
直近10年のバックテストでは米国株式の方がリスクが低く見えることもありますが、これは結果論にすぎません。
理論的には、異なる値動きのする株式に分散することでリスクが低減されるため、全世界分散のほうがリスクは低くなることが期待されます(ただし最終的には自分が投資する期間に依存します)。
いずれにせよ、リスクを本当に下げたいなら、株式同士で組み合わせるよりも、無リスク資産(現金・個人向け国債など)の比率で調整するほうがはるかに効果的です。
5. 目的別の判断早見表
| 目的 | 二刀流の評価 | より適切な方法 |
|---|---|---|
| 「将来がわからないから分散したい」 | 目的とずれている | 米国と米国以外を均等配分する、オルカン1本など、目的に対してより合理的な手段がある |
| 「リスクを下げたい」 | 効果に疑問 | 二刀流ではなく、無リスク資産(現金・債券など)との資産配分で調整 |
| 「意図的に米国を加重したい」 | あり | 目的と手段が整合している |
| 「日本株・米国除く先進国・新興国をアンダーウェイトしたい」 | やり方に疑問 | 目的と手段は間違ってはいない。 ただ「S&P500とオルカン」での調整は一般的ではない |
6. まとめ:基本はオルカン一本で十分
個人的な意見
米国に意図的に加重したい場合を除けば、オルカン一本で十分です。
- 目的と戦略がちぐはぐだと、期待通りの結果になりません
- 自分の目的に対して合理的かどうか、よく確認してから採用しましょう
- 特に資金が少ないうちは変にごちゃごちゃ悩んだり、手間を増やすよりも入金力のアップなど自身に確実にコントロールできるところから頑張りましょう。
大切なのは、イメージや印象ではなく、理屈・理論に基づいた合理的な判断です。
「なんとなくいいかも」とか「わからないから」で二刀流を選ぶのではなく、自分の目的に対してその戦略が本当に有効かをよく考えて採用するようにしましょう。
米国を80%にしたい場合など、戦略によっては、オルカン1本の時に比べて、定期的なリバランスやポートフォリオ管理の手間が増えることは留意しておきましょう。
ちなみに私は元々S&P500(VOO)100%で運用してきて、今は全世界株式で運用してるので、どちらの気持ちもわかります。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の投資商品や行動を勧誘するものではありません。投資判断はご自身の責任のもとで行ってください。

