
バンガードが示す10年先のリターン見通し ― 私たちはどう受け止めればいいのか
長期で資産形成に取り組んでいると、「これから先、株式や債券はどのくらい増えていきそうなのだろう」と、ふと立ち止まって考える瞬間があると思います。今回ご紹介するのは、世界最大級の運用会社のひとつであるバンガード社が公表している「VEMO(Vanguard Economic and Market Outlook)」のリターン見通しです。
これは「当てに行く予想」ではなく、現在の評価水準や金利、経済環境などをもとに、今後10年間で年率どのくらいのリターンが期待できそうかを、確率的な幅をもって示したものです。今回はその数値を素直にお伝えしたうえで、私たちが日々の投資にどう活かせるかを一緒に考えてみたいと思います。
1. バンガードの見通しとは
バンガードでは、独自の経済モデル「VCMM(Vanguard Capital Markets Model)」を用いて、資産クラスごとに10年間の年率リターンの分布と、変動の幅(ボラティリティの中央値)を算出しています。
表の見方として、押さえておきたいポイントは次の3つです。
- 1年〜数年の短期予測ではなく、10年間の年率(年平均)での見通しであること
- 「5パーセンタイル〜95パーセンタイル」のように、確率分布の幅で示されていること(中央の50パーセンタイルが「中央値」)
- 定期的に更新されるため、市場環境が変われば数字も変わること
たとえば「5パーセンタイル -2.6%」は、悲観的なシナリオの下限あたり、「95パーセンタイル 15.1%」は楽観的なシナリオの上限あたり、「50パーセンタイル(中央値) 5.9%」がちょうど真ん中の見通し、というイメージで読み取れます。
2. 株式の10年リターン見通し(年率)
まずは株式の見通しからご紹介します。バンガードが示しているのは米ドルベースの数値です。
| 資産クラス | 5%ile | 25%ile | 中央値 (50%ile) |
75%ile | 95%ile | ボラティリティ (中央値) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 米国株式 | -2.6% | 2.6% | 5.9% | 9.6% | 15.1% | 15.3% |
| 米国以外のグローバル株式(ヘッジなし) | -1.2% | 3.1% | 6.0% | 9.1% | 13.7% | 18.9% |
| 米国以外の先進国株式(ヘッジなし) | -1.2% | 3.3% | 6.4% | 9.4% | 14.1% | 18.1% |
| 新興国株式(ヘッジなし) | -4.9% | 0.5% | 4.6% | 8.7% | 15.3% | 25.3% |
| 米国バリュー株 | -1.9% | 3.4% | 6.9% | 10.6% | 16.3% | 18.9% |
| 米国グロース株 | -3.5% | 1.8% | 5.3% | 9.1% | 14.6% | 16.4% |
| 米国大型株 | -2.7% | 2.5% | 5.8% | 9.5% | 15.0% | 15.1% |
| 米国小型株 | -2.9% | 2.7% | 6.8% | 10.7% | 17.1% | 19.9% |
| 米国REIT | -2.8% | 1.6% | 4.8% | 8.1% | 13.0% | 17.9% |
中央値で並べてみる
ぱっと見でつかみやすいよう、中央値(50パーセンタイル)を棒グラフ風に並べてみました。
こうして並べると、米国以外の先進国株式やバリュー株、米国小型株が中央値で6%台後半と相対的に高めに見積もられている一方、新興国株式や米国REIT、グロース株は中央値が5%前後とやや控えめです。
注目したいのは、新興国株式のボラティリティ中央値が25.3%と、ほかの資産クラスと比べてもかなり大きい点です。期待リターンの幅も -4.9%〜+15.3%と広く、振れの大きさを意識しておきたい資産だとわかります。
ここで注目したいのは2025年末の予想リターンとの比較です年初からの下落を受けて3月末時点でわ期待リターンが大方グロース株を中心に昨年末より改善しています。
その後大きく反発したため、現在の期待リターンとはまた若干ずれてるかもしれませんか、それでもバンガードの予想モデルによると、下落した時に買うと、割長期的な株式投資の期待リターンは高くなる傾向があります。
3. 債券の10年リターン見通し(年率)
続いて債券です。金利が一定水準まで戻ってきたことで、ここ数年と比べると債券の期待リターンは見直されています。
| 資産クラス | 5%ile | 25%ile | 中央値 | 75%ile | 95%ile | ボラティリティ (中央値) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 米国総合債券 | 3.3% | 4.1% | 4.7% | 5.3% | 6.3% | 6.3% |
| 米国以外の総合債券(ヘッジあり) | 3.1% | 4.2% | 5.0% | 5.8% | 7.0% | 5.0% |
| 米国国債 | 3.1% | 4.0% | 4.6% | 5.3% | 6.2% | 6.7% |
| 米国短期国債 | 2.4% | 3.3% | 3.9% | 4.5% | 5.4% | 1.7% |
| 米国中期国債 | 2.6% | 3.4% | 4.0% | 4.6% | 5.5% | 5.2% |
| 米国長期国債 | 3.6% | 4.8% | 5.6% | 6.5% | 7.8% | 10.4% |
| 米国クレジット(社債) | 3.3% | 4.2% | 4.8% | 5.4% | 6.3% | 6.5% |
| 米国ハイイールド社債 | 3.1% | 4.3% | 5.2% | 6.0% | 7.2% | 9.4% |
| 新興国国債(ヘッジあり) | 3.7% | 5.1% | 6.1% | 7.0% | 8.4% | 10.9% |
| 米国TIPS(物価連動国債) | 1.8% | 2.8% | 3.6% | 4.4% | 5.6% | 5.0% |
| 米国MBS(住宅ローン担保証券) | 3.6% | 4.5% | 5.1% | 5.5% | 6.2% | 4.0% |
| 米国地方債 | 3.0% | 3.7% | 4.1% | 4.6% | 5.2% | 4.7% |
| 米国ハイイールド地方債 | 3.3% | 4.1% | 4.7% | 5.3% | 6.1% | 8.1% |
債券の中で中央値が最も高めに見積もられているのは、ヘッジ付きの新興国国債(6.1%)です。次いで米国長期国債(5.6%)、ハイイールド社債(5.2%)、MBS(5.1%)、米国以外の総合債券(5.0%)と続きます。一方で、米国長期国債はリターンが高めに出ている代わりに、ボラティリティ中央値も10.4%と相対的に大きく、価格変動への耐性が必要になる点には留意したいところです。
4. その他の資産・通貨・インフレの見通し
| 項目 | 5%ile | 25%ile | 中央値 | 75%ile | 95%ile | ボラティリティ (中央値) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 米国キャッシュ(短期金融商品) | 1.6% | 2.7% | 3.4% | 4.1% | 5.2% | 1.1% |
| 米国地方債キャッシュ | 2.5% | 2.8% | 3.0% | 3.3% | 3.6% | 0.5% |
| コモディティ | -3.6% | 1.7% | 5.4% | 9.2% | 14.7% | 16.5% |
| 米国インフレ率 | 0.6% | 1.4% | 2.0% | 2.5% | 3.4% | 1.7% |
| 米ドル | -2.9% | -1.5% | -0.5% | 0.5% | 1.9% | 8.2% |
注目したいのは、米国インフレ率の中央値が2.0%という点です。これを実質リターンの物差しとすると、たとえば米国株式の中央値5.9%は、実質では年3.9%程度の伸びという見方もできます。地味に感じるかもしれませんが、長期で複利が効いてくると、決して小さくない差になります。
5. この数字をどう受け止めるか
(1)「予想」ではなく「目安」として使う
VEMOの数値は、現在の市場の評価水準や金利を出発点として導かれた「合理的なシナリオの分布」です。中央値どおりに進むこともあれば、5パーセンタイルや95パーセンタイル付近のシナリオに振れることもあります。「この数字に賭ける」というよりは、「これを参考にしながら、自分の長期計画が現実的かを点検する」ような使い方が向いていると感じます。
(2) 国際分散の意義を、そっと再確認できる
米国株一強の時代が長く続いたこともあり、ポートフォリオを米国に寄せている方も多いと思います。今回の見通しでは、米国以外の先進国株式やバリュー株の中央値が、米国株式の中央値5.9%を少し上回る水準で示されています。これは「米国が悪い」という話ではなく、評価水準の差から自然と導かれている結果で、地域や投資スタイルを分散しておくことの意味を、改めて静かに思い出させてくれる内容になっています。
(3) 債券の役割が見直されている
金利が低かった時期は、「債券を持っていてもあまり増えない」と感じる場面もありました。今は、米国総合債券の中央値が4.7%、長期国債で5.6%、ハイイールド社債で5.2%と、株式の中央値に近い水準まで期待リターンが戻っています。ポートフォリオの安定装置としての役割と、それなりのリターンの両方が期待しやすい環境になっているといえそうです。ただし生債券はコストが高いこと、また外国債券は為替リスクがある事には注意が必要です
(4) リターンとボラティリティを両方眺めるくせをつける
たとえば新興国株式は中央値4.6%に対しボラティリティ25.3%、米国長期国債は中央値5.6%に対しボラティリティ10.4%です。一方で米国大型株は中央値5.8%・ボラティリティ15.1%と、リターンの大きさに対して振れ幅が比較的穏やかです。「同じくらいの期待リターンなら、揺れがより穏やかな方を選ぶ」という視点を持つと、自分のリスク許容度に合った資産配分が見つけやすくなります。
(5) 期待リターンが控えめでも、できることはある
10年で年率5〜6%前後という見通しは、過去の好調期と比べると控えめに映るかもしれません。それでも、私たちにできることはシンプルだと思います。
- 長期の視点を持ち、短期の値動きに振り回されすぎないこと
- コストの低い商品を選び、手元に残るリターンを大切にすること
- 自分のコントロールできることに注力し規律ある投資行動に努めること
バンガードのVEMOは、未来を断定するものではなく、「今の市場環境を踏まえると、こんな分布の中に収まりそうですよ」と静かに教えてくれるにすぎません。
中央値だけを見るのではなく、上下の幅やボラティリティもあわせて眺めることで、より立体的に自分の計画を点検できます。
数字に一喜一憂するのではなく、長期計画を見直すきっかけとして、そっと活用していきたいですね。
なお、私はオルカンに投資を続けていきたいと思います
いつもありがとうございます。
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出典:Vanguard「Vanguard economic and market outlook(VEMO)― 10-year annualized return forecasts」
※本記事の数値は、参照時点で同社が公表していた見通しに基づいています。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の投資商品や行動を勧誘するものではありません。投資判断はご自身の責任のもとで行ってください。
