【オルカンの地域別構成比率】

22年3月末の、オルカンの地域別の構成株式をみると、米国が6割以上を占めています。
これは浮動株調整後の世界の株式市場の状態を概ね反映するものであり、
世界の株式市場全体をそのまま保有したい投資家にとっては最適な商品の一つだと思います。
【参考・世界の時価総額の推移】
なお、この比率は時間とともに変化します。
第二次世界大戦後の市場を振り返ってみると、日本のバブル期を覗いて、米国株式市場の比率は50%前後で推移してきました。

Credit Suisse Global Investment Returnsより
【米国株式市場との二刀流はあり?】
さて、ここ数年、好調な米国株式市場と、全世界株式を両方に投資をするという投資家の方も増えてきたように感じます。
今回はこの戦略について少し考えてみたいと思います。
結論としては、目的次第だと思います。
金融理論の基本を考えるとあえて2個持つ必要はない。
ただ、目的によっては「あり」といえる。
けど、間違った目的でこの戦略を採用している方も一定数いる。ように個人的には思います。
【資産配分で考える】
長期的に運用する場合、そのPFのリスクとリターンの大部分を資産配分が決定します。

まず、一旦、二刀流にするとどうなるか資産配分で考えてみましょう。
仮に、米国株式市場に投資をするファンド(VTIやS&P500)と全世界株式に投資をするファンド(オルカンやVT)を50:50の半々で持つとしましょう。
そうすると、現状の資産配分はだいたいこんな感じになります。

米国株ファンド50%+残り半分の全世界株式ファンドうちの6割が米国株式市場なので、
資産全体では、約80%が米国株式市場、その他の市場が約20%。
こんなポートフォリオで運用していることになります。
【米国に加重したいのならあり】
米国株が今後も全世界株式よりも高いリターンを残すだろうから、
米国に加重しよう(でも米国オンリーだと不安だから…)という感じで、
こんな感じのPFを狙って意図的にやっているのであれば全然良いと思います。
もちろん、結果的にその戦略が上手くいくかどうかはわかりませんが、
そういう考えで、この二刀流戦略を行っているのであれば全然納得できます。
半々までとはいかなくても、やや米国に加重したいといった方もいることでしょう。
ただし、似たような(比較的高い)相関の投資対象の比率を数%~10%ポートフォリオ内で微調整しても、そこまで大きく投資成果に影響することは通常ありません。
特に数百から数千万程度の金額を運用する場合、そうやってポートフォリオを細かくいじるコストや労力に見合うかどうかをよく考えることが大切です。
また、今後も米国株が強いのであれば、全世界株式内の米国株比率が上昇するので、オルカンとS&P500のリターンの差はより縮まるでしょう。
【分散や保守的な戦略を求める方にはあまり】
一方で、上の円グラフを一目見て分かる通り、
オルカンと米国株ファンドを、半々に持つ二刀流戦略だと、ポートフォリオの大部分を米国株式市場の出来に依存することになります。
①今後のことがわからないから二刀流という方へ
近年は米国株が好調でしたが、今後はどうなるかわかりません。
もし、リターンも、リスクも、相関も、
『全く』今後のことが予想できないという前提にたつのであれば、
このような二刀流で過度に米国株式市場に加重するPFではなく。
理屈や理論の上では均等配分(1/N)が最適ということになります(過去記事参照)。
参考図書(金融のプロが実はやっている 最もシンプルで賢い投資の結論)
資産クラスの分け方や選択はいろいろな考え方がありますが、
今の話の流れなら「米国株と米国以外の地域50:50」
というようなポートフォリオの方が、
全く何も予想できないという方には理屈の上では向いていると思います。
(他にも、日本株、先進国(除く日本)と新興国で3資産均等とかいろいろな考え方があります。前提として、何かしらは少しわかるというのであれば均等配分ではない方が良い選択肢となる可能性があります)
②リスクを下げたいから二刀流と言う方へ
近年好調だったこともあり、切り取る期間にもよりますが、
過去10年程度のバックテストでは、全世界株式や全世界株式除く米よりも、リスクが低いこともある米国株式市場ですが、
より長期で見ると、あるいは理屈の上では、全世界の株式市場に分散投資をした方がリスクは低くなることが期待できます。
(「近年は相関も高まってきましたがそれでも完全相関ではありませんし、時期によって変化します)
もし本当にリスクを下げたいので言うのであれば、
米国株式市場に加重するという選択肢よりは、
全世界株式に分散投資しつつ、無リスク資産(現金など)への配分で調整したり、他の資産と組み合わせたり、人的資産の向上に努めるのが一般的だと思います。
【まとめ】
他にもいろいろな考え方があると思いますが、
米国株ファンドと全世界株式ファンドの二刀流については、
ちゃんとした目的があり、
その目的に沿って合理的な手法としてやっているのであれば、
個人の投資は自由ですから、まあ全然良いと思います。
(少額だがポイントを効率よく貰うため、その手間をおしまないためなど)
ただ、目的に対して、あまり合理的ではない、ちぐはぐな感じで、
要は、よく勉強せず、理解不足なまま、二刀流をしていると、
当然その目的や期待に沿った運用とならず、
思っていたのと違う答えが返ってくる可能性がありますから、
あまりよくないといいますか、気を付けて欲しいなとも思います。
今パッと思いつく限り、
米国に意図的に加重したいという方を除いては、
あえて二刀流にするよりは、
オルカンやVT一本でいいんじゃないのかなと個人的には思いますが、
(それでも6割は米国株なわけですし、若干ですが手間とか増えますから)
私も全ての投資家の方の考えを知っているわけではないので、
○○の場合はどうですか?ありなんじゃないですか?というのがあれば是非Twitterのコメ欄で教えていただけると幸いです。
まとめると、目的によってあり。だけど、ちゃんと自分の目的にその戦略がマッチしているのか、よく考えてから採用しよう。
というのが私個人の雑感です。
あと資産運用に関しては、
イメージや印象、言葉の強さや作文力、口の旨さ、言葉尻、表現力、そういった文系的な判断というか、そこら辺の昔の政治家のような演説の強弱に影響されてどうするか決めるのではなく、
ちゃんと理屈や理論に基づいて、合理的に判断することが大切だと思います。
いつもありがとうございます。
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