【バンガードの研究】
バンガード・ヨーロッパのチーフエコノミスト兼投資戦略グループの責任者ジュマナ・サレヒーン氏が、ファイナンシャルタイムズに執筆した記事を紹介します。
https://www.ft.com/content/fc5cec4d-6c61-4d80-8bea-95447d18318a
ポイント
サレヒーン氏は、FRB等の利下げを受けて、金利は経済を刺激も抑制もしない水準である「中立金利」あるいはそれに近い水準に落ち着く可能性が高いことを指摘。
そして、重要な点として金利は下がるもののコロナ禍以前ほど低い水準にはならないとし、債券がポートフォリオの中で大きな価値を提供する新たな環境になりつつあると指摘しています。
【要旨】
ジュマナ・サレヒーン氏等のグループは過去90年の政策金利を研究(詳細は元記事)。
まとめとしては、
高金利の体制下では、株式と債券に10年投資した時の実質リターンは年率7%強と同等だった。
ただ、株式のリターンは債券の4倍の変動があったため、低リスクの債券の方がリスク調整後リターンでのパフォーマンスが特に魅力的だった。
低金利の環境では、10年後の債券の実質リターンは4.5%、世界株式は8%と株式は債券よりも大幅に高いプレミアムを提供したこと。
また株式と債券のボラティリティもほぼ同等であったため、リスク調整後ベースでの債券の魅力も相対的に低くなった。
としています。
【実世界への応用】
同氏らは「過去は未来を予言するものではない」と注意しつつも
現在、高金利環境で考えると、新たに重大な経済的または政治的ショックがないと仮定した場合、
バンガードは全世界株式のリターンは5%強、全世界債券のリターンは5%弱と予想しており、これは過去の歴史と一致している。と論じています。
【補足】
同氏らは、高金利の環境下では債券はポートフォリオにおいてより大きな価値を提供するとし、以下のように主張しています。
株式と債券を半々に保有する投資家にとって、高金利の環境とそれに伴う債券の見通しの改善は朗報である。分散としての役割だけではなく、収益源としても価値をもたらすからだ。
また、バンガードの予測は、米国株式のバリュエーションがファンダメンタルズに比べて割高であるという見方を具体化しています。金利上昇の痛みは、世界の株式市場ではまだ十分反映されていないとしています。
投資のリスクと、それがモデル予測にどの程度織り込まれているかについては、誰もが警戒する必要がある。金利はコロナ前よりも高い水準で落ち着き、米国株のバリュエーションは割高になると当社は見ている。
歴史と当社のモデル予測は、高金利体制下では、リターンと分散化の両方の観点から、債券がポートフォリオにおいてより大きな価値を提供することを示唆している。
体制(金利の環境)が変わった場合、投資家は少なくともポートフォリオを再評価する必要がある。
【個人的な感想】
資産が少なくとも1億円以下の個人投資家には、株式と現金でよいと主張していた山崎元氏も、それと同時に、
〇ハイイールド債などには「リスクプレミアム」が存在すること
〇金利のある世界では(国内で政策金利が2%程度)、投資対象として債券を考えてみるのもよい
と主張していました。
リスク許容度が高い方、資産がまだ少ない方(数千万程度)、金融知識が乏しい方、人的資本が豊富な方(給与等からの拠出で日々の生活やリスクを補える方)など、
割と多くの方は無理に債券をポートフォリオに加える必要はないと個人的には思います。
(無リスク資産の置き場として効率の良い個人向け国債変動10年除く)
しかし、合理的な理由がある場合は、債券への投資を考えてみるのもよいでしょう。
海外への債券へ投資をする際は、為替リスクと税金などのコストによく注意することを忘れずに。
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