
【なぜ、人は間違いを繰り返すのか】
LTCM(ロングタームキャピタルマネジメント)という少し懐かしい名前を、最近投資を始めた方は知っているだろうか?
1994年~1999年まで存在したヘッジファンドで、レバレッジや投資理論の話をしていると、必ずと言っていいくらいどこかで名前があげられる有名なファンドだ。
LTMCは、2人のノーベル経済学賞受賞者マイロン・ショールズとロバート・マートンやFRBの元副議長(デビッド・マリンズ)、ソロモンのトレーダー部門トップにまで登り詰めたローゼンフェルドなど、
当時の世界トップレベルの優秀な頭脳と人材集め、ドリームチームと謳われた。
【世界一の頭脳集団の失敗】
1995年には43%、1996年には41%という高い運用成績を残すも、高すぎるレバレッジを扱いきれず、1998年8月に起こった予想外のロシア金融危機を発端に1998年10月破綻している。
これらの話は一般的にもよく知られており、
高すぎるレバレッジの危険性、めったに起きない予想外の事態へ対応やリスク管理の大切さ。世界一の頭脳集団の失敗。
などといった切り口で、後世の投資家への教訓として語り継がれている。
高すぎるレバレッジの危険性、めったに起きない予想外の事態へ対応やリスク管理の大切さ。世界一の頭脳集団の失敗。
などといった切り口で、後世の投資家への教訓として語り継がれている。
【バフェットとマンガーに出資を依頼】
そのLTCMを設立したメリウェザーだが、実は、開業する前に、バフェットとマンガーにLTCMへの出資を依頼しにオマハを訪れている。
バフェットの本拠地オハマへと降り立ったメリウェザーは、バフェットがカジノを所有するのが好きということを知っていた。
意外かもしれないが、バフェットは自身の哲学と理にかなっていれば、集中投資や裁定取引、レバレッジを当たり前に用いているし、初期のマンガーはレバレッジをガンガン使っていた。
以前に記事にしたが、二人の過去の投資実績を振り返ってみると、大勢に向けて発言している内容や一般的なイメージと異なる点がいくつもある。
【他の投資手法も正当に評価するバフェット】
例えば、バフェットは、クオンツファンドやそういうアプローチを全否定しているわけではない。むしろ昔から正当に評価している。
バフェットはBPLを解散する際、出資者の一人に「エド・ソープのクオンツファンドに投資するのはどうか」という質問され、エドソープと直接話し探りをいれ、後日彼のクオンツファンドにお墨付きを出している。
頭ごなしに否定するのではなく、儲けるために自身の投資理念の範囲内で使えるものは使う。合理的であれば正当に評価する。というのがバフェット達の器の大きさであろう。
インデックスファンドも自身は優良企業への集中投資を是として主張してきたにも拘わらず、かなり早い段階から認め、高く評価していた。
自身の戦略と異なっても、全否定するのではなく、その良さを正当に評価し、認める姿勢や柔軟さを私達も現代の日本の個人投資家等も見らなうべきなのではないかと思う。
特に、アクティブ投資をする方は、より儲ける機会がないか、他の手法から学べるものはないかと探るバフェットの貪欲さを手本にすべきだと思う。
【華麗なる食卓】
話を本筋に戻そう。
今では有名となっているバフェットの行きつけのステーキハウスで夕食を囲みながら、
メリウェザーは資料とりだし、考え得るさまざまは結果と、利益や損失の度合い。資本金の25倍のレバレッジを使って、無数の取引を重ねることで小さな利益を少しづつ獲得する戦略を説明した。
予想される最大の損失は資産の20%、そうなるオッズは1対100未満だそうだ。(実際は破綻したが)
損失が出始めた時、それが逆転するまで投資家をつなぎとめる必用があることを、メリウェザーは理解しており『ロングターム(長期)』という社名はそこを意識してつけられたものだった。
【マンガーの評価】
この時のことをマンガーは後日こう振り返っている。
「非常に頭のいい連中だと思った」「しかし、複雑すぎるのとレバレッジにちょっと疑いを抱いた」
結局、レバレッジが大きすぎたことと、リスクの上限決定する手立てがないので、バフェットとマンガーを説得するに至らなかったが、
あの辛口マンガーに「頭の良い」と言わせるくらいには戦略に一定の説得力はあったと思われる。
しかし、理解できないものには投資をしないという投資哲学を貫いたことが、結果的にバークシャーを救うことになる。
【世界一の投資インフルエンサーの姿勢を見習って欲しい】
マンガー「営業の看板に使われるというもの気が進まなかった」「我々が参加すれば皆こぞって参加するとわかっていたからね」
LTCMはバークシャーを「ユダの山羊として使おうとしている」とマンガーは見ていた。
「肉にされる山羊の先頭を勤める役だ。その山羊だけは殺されずに寿命を全うするが、後をついてきた連中はみんなに肉にされてしまう」
バフェットもマンガーも、自分達の発言や行動が周りの投資家に大きな影響を与えることを十分に理解していた。
この時も、周囲の投資家やバークシャーの出資者、あるいは自身の評判やファン等に対して、責任をある行動をとり、また後からついてくる他の山羊達の命を心配し守ろうとしたわけだ。
最近のごく一部の自身の利益のために投資を「ネタ」に他人からお金を巻き上げている人達、あるいは、無責任な発言で他人を巻き込んでいく人達に100回くらい聞かせたい話だ。
利益をあげることを悪いと言っているのではない。無謀な賭けも一人で自身のリスクの範囲でやるならいいだろう。ただ、周りに影響を与えるのであれば、責任と誠意と良識をもって行動して欲しい。ファンや人との縁を大切して欲しい。
今回、私が最も言いたかったのはこの部分だ。
【そして、伝説へ】
結局、その後、LTCMは人気を集め、最初の3年で投資家の資金を4倍に増やした。
手数料2%と運用利益の1/4が徴収されるそのファンドに世界中の多くの銀行や機関投資家、ナイキのCEOフィル・ナイトら富裕層たちから資金が集まった。
裏話としては、メリウェザーはバークシャーの株をこの時空売りしていた。バフェットに不満を抱いていたからとも言われている。
その後、LTCMの後を追い、似たようなファンドが乱立した。そして、1998年夏一斉に焼かれた。
ちょうど、近年、とある東洋の島国で、レバレッジ型投信がたて続けに設定されたのを思い出せば、最近投資を始めた方でもイメージしやすいかと思う。
「歴史は繰り返さないが韻を踏む」とはよく言ったものだ。
【バフェットの評価】
後日、メリウェザー手紙を読んだバフェットはこう評している。
このような異常な事例の資料を添付。
①平均IQ160以上の人間十数人が②全員合計すれば250年の経験を積んでいる分野で働き③相当割合の自己資本を事業に投じ、④巨額のレバレッジを使っていた。
ゼロは何度かけてもゼロだ。
裏話としては、今度は一転、他のトレーダー等は、LTCMの所有していることがわかっている銘柄を空売りし始めた。安値でも売りさばかなくてはいけなかったので、必ず下がるとわかっていたからだ。
そして、ゴールドマンサックスはバフェットと接触。両社は手を組んでLTCMのPFと債務を引き受け、危機を乗り切ったのち、巧みに売り抜け儲ける算段に入る。
【投資の世界は恐ろしあ】
歴史を振り返ってみれば、投資の世界は元来このように生き馬の目を抜く、魑魅魍魎の渦巻く複雑怪奇な世界なのである。
YOUTUBEやTwitterを通じて投資が身近になったことで、良かった面ももちろんある。
だが、ここ数年の上昇相場も相まって、忘れちまったこともあるんじゃないだろうか。
だからといって、投資が簡単になったわけもないし(むしろ年々難しくなっている)市場は優しくもない。あなたの事情など知った事ではない。
サッカーのチャンピョンズリーグや野球のメジャーリーグ、バスケのNBAなどで活躍するトッププロに、昨日今日ボールに触った小学生が勝てるだろうか?
あまり舐めない方がいいと思うし、よく勉強した方がいい。
それが結局自分自身の資産やお金、幸せを守ることになる。
ただ、個人的には、そういう非常に厳しい世界でも、素人や初心者でもプロ並と互角に、かつお手軽に戦う手段として、パッシブ運用のインデックスファンドという選択肢があることをとてもありがたいと思っている。
麻雀でいえば、「常に配牌時白ドラ3のインスタント満貫確定&好形イーシャンテン」くらい状態からプロと戦えるようなものだ。
それでも時々負けることもあるだろうが、規律を持って挑めば、平均的なおそらくプロといい感じで戦えるだろう(平均打点や速度を考えると、長期的には上回るかもしれない)
麻雀を知らない人もツッコミたい人もスルーしてくれるとありがたい。
今回のまとめ
①投資情報を発信する方はマンガーの姿勢を見習ってもらえたら嬉しい。
②初心者の方はあまり油断したり、なめることなく投資を勉強した方がいい。
③歴史は繰り返さないが韻を踏む
以上。こんな昔話が初心者の方や最近投資を始めた方のお役に立てば幸いです。
いつもありがとうございます。
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