
【バンガード・アセットアロケーション・ファンド】
今回は「バンガード・アセットアロケーション・ファンド」の失敗について、紹介していきたいと思います。
特に投資初心者の方には大切な教訓が詰まったお話だと思います。
バンガード・アセットアロケーション・ファンドは、
バンガードの創設者ジョン・ボーグル氏が、
伝説的なクオンツ投資家ウィリアム・ファウスと彼の設立したメロン・キャピタル・マネジメントの長期的な成績に感銘を向け、
メロンを新しいアセットアロケーションファンドの投資顧問にしたことにより、1988年12月3日に誕生しました。
【TAA(Tactical Asset Allocation・戦術的資産配分)】
この新設されるファンドは、
投資顧問会社に戦術的なアセットアロケーションに対する完全な裁量権が与えられていました。
つまり、将来の予測に基づいて、メロンが株式と債券の比率を自由に変更することができました。
バンガード・アセットアロケーション・ファンドの基本的な戦略は、株式(S&P500)60%と長期米国債 40%の初期設定からスタートし、
主に長期国債の利回りとS&P500の株式益利回りとのスプレットに基づく手法を用いて、メロンがファンドの株式比率を増減するというものでした。
ベンチマークとして、S&P500指数・60%、米国総合債券指数・40%に固定したバランスファンドの成績と比較して評価する事になりました。
【成功を収めたアセットアロケーション・ファンド】
バンガードの取締役会では懐疑的な意見も聞かれる中、
バンガード・アセットアロケーション・ファンドは一旦成功を収めます。
1989年から2007年までの約20年の間、
バンガードアセットアロケーション・ファンドは平均年率11.2%のリターンを残しました。
これは、60:40に固定したファンドのリターン平均年率10%を1.2%程上回る素晴らしい物でした。
【リーマンショック】
2007年末、バンガード・アセットアロケーション・ファンドの株式比率は100%になっていました。
この時、同ファンドの資産は116億ドルに達していました。
しかし、2008年のリーマンショックを受けて、
同ファンドのリターンは-33.8%と、60:40ファンドの-22%を大きく下回ることになりました。
暴落前にリスクを取り過ぎていたわけです。
そして、その後の2009年~10年の反発時にも巻き返しに失敗しました。
2007年から2011年の間、60:40ファンドの累積リターンが+10.0%だったのに対し、
アセットアロケーション・ファンドは-13.7%のリターンとなりました。
2012年にはファンドの資産はついに20億ドルを下回り、60:40の固定したバンガードのバランス・ファンドと統合することが決定しました。
【まとめ】
ファンドが設定されて消えるまで間の、
1989年から2011年までのリターンを比較すると
戦術的ファンド 平均年率 8.5% 累積リターン 551%
固定ファンド 平均年率 8.6% 累積リターン 571%
となっていました。
あのボーグル氏が、取締役会で一部の反対意見を押し切って設定に踏み切った程の、超凄腕の一流のマネージャーたちが、
コストや労力をかけて将来を予想し、いろいろ戦術的に動き回っても、結果こうなるわけです。
このような結果ならば、ただ黙って資産配分を維持していただけの場合とほとんど変わりません。
ボーグル氏は、「うまく行っていた。うまく行かなくなるまでは」
「(リーマンショック)その後、突然メロンのアプローチは上手くいかなくなってしまった」
と評しています。
この話はほんの一例に過ぎませんが、
この話からは将来の市場を予測し、その予測を基に資産配分を動的に変えるような戦略を長期的に成功させるのは難しいということがわかります。
もし、あなたの投資スキルが、平均的なプロのマネージャーレベルなら、
適切な動的な資産配分戦略を「容易に」間違える可能性があります。
適切な動的な資産配分戦略を「容易に」間違える可能性があります。
時に上手く行く場合もありますが、長期的にコストを正当化できるほどの正しい予測とタイミングを実行し続ける投資家はそうそういません。
例えば、下落を予測して現金化をする場合であれば、市場から出るタイミングと戻るタイミングを二度成功させなければなりません。
さらにコストを正当化できるほど市場が動くかもわかりません。
一見、賢明にも見えるこのような行動は、ともすればタイミング戦略の失敗や追加コストにより、ただ黙って資産配分を維持していた場合に比べて自らの手でリターンを押し下げてしまう事にも繋がります。
さらにコストを正当化できるほど市場が動くかもわかりません。
一見、賢明にも見えるこのような行動は、ともすればタイミング戦略の失敗や追加コストにより、ただ黙って資産配分を維持していた場合に比べて自らの手でリターンを押し下げてしまう事にも繋がります。
私はこのようなミスをできる限り減らすため、
また「将来の予測」や「自分の能力」や「人間の能力」にそもそも限界がある事を知っているため、
そして、最小限の労力で投資を継続するため、
市場予測に基づいて動的に資産配分を変更するような戦略はとらずに、
資産配分を維持しつつ、今後も規律ある投資を続けていきたいと思います。
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