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国家の繁栄と衰退をわけるもの。


成長する国。成長が止まる国。成長が出来ない国。

「国家の興亡」「繁栄と貧困」を分ける要因とは何なのでしょう?


その①では、産業革命以降の情勢を振り返りました。



その②では「国家の繁栄と貧困」を分ける境界として、

有力な説の一つ「地理説」について触れました。

また、アメリカの地理的な優位性についても振り返りました。

http://etfsp500.com/archives/25323616.html


地理説とは、簡単に言うと、地理的な違いによって国の貧富の差が生まれるという主張です。

現在、経済的に豊かな国の多くが温帯から冷帯に属しており、北回帰線~南回帰線の間の熱帯や乾燥帯地域には貧困国が多いことなどから、一般論としても受け入れられています。

経済学者のジェフェリ・サックス氏を始め、一部の社会学者や評論家の方にも根強く支持されています。

今回はその続き、その➂「地理説への反論」となります。




地理や気候は繁栄と貧困の境界になり得ない。


前回②にて、南北アメリカ大陸の国々の貧富の差でグループ分けしました。

もしよければ、前回の内容を確認して頂くと、以降の話がよりイメージしやすいかと思います。

すごく簡単に言うと、現在アメリカ・カナダが豊かで、ラテンアメリカ・中南米が経済的に貧しくなっています。

これは、一見、地理説と一致します。


しかし、歴史を振り返ってみると、地理説には疑問が生じます。

コロンブスが米国を発見した頃、中南米にはアステカやインカ帝国があり、(現在の中米やペルー・ホリビアなど貧しい国が含まれる)

逆にカナダやアメリカには、石器時代並みの文明・テクノロジーしか持たない人々が住んでいました。

つまり、ヨーロッパ諸国が上陸する前のアメリカ大陸は、熱帯が多い中南米の方が温帯よりも遥かに裕福だったわけです。

こうした逆転劇の例は世界中にあります。


また、地理説においては貧困とされる地域(主に北回帰線~南回帰線の間)における繁栄した国家の痕跡もたくさん残っています。

カンボジアのアンコール、南インドのヴィジャヤナガル、エチオピアのアクスム、当時最も進んだ都市の一つだったモヘンジョダロやインダス文明などが一例です。

近代においても、北朝鮮と韓国、西ドイツと東ドイツというように、すぐ隣のほとんど同じ地理・気候の国々でも大きく経済成長に大きく差がついた事例もあります。

歴史的に見れば、地理や気候「だけ」では、文明の繁栄と衰退を説明することは難しい(反例がたくさんある)ということがわかります。



「補足」

地理説の有力な主張①熱帯病について


熱帯病がアフリカの乳幼児の高い死亡率などに影響を与えていることは確かです。

しかし、熱帯病が実際に経済成長とどのくらいの関係があるかは「わかりません」。

この問題の原因は、貧困、公衆衛生(飲料水や下水の汚染)、医療レベル、対策をとれない(積極的にとる気がない)政治体制など、様々な要因が絡みます。

イングランドをはじめとする欧州などの先進国も、19世紀までは極めて不衛生な場所でしたし、病気もたびたび蔓延しました。

現在の健康状態や平均寿命などの違いは、経済成長の「原因」や「要因」というよりは、むしろ「結果」では?とも思います。


地理説の有力な主張②土壌について

熱帯が貧しいのは農業の生産性が低い。

熱帯の土壌は痩せていて栄養分を保持できない。というものです。

集中豪雨で土壌がすぐに侵食されてしまうことなどこの説には一理あります。

ただ、農業生産性(単位面積当たりの農業生産高)が高くないのは、土壌や気候だけではなく、土地の所有構造や、収奪的な政治・経済の構造により、農民に対してインセンティブが働かず、新しい技術の導入が積極的に進まなかった事も影響します。

また、19世紀~現在の、世界の巨大な不平等の差は、農業生産力の相違が生み出したのではなく、工業技術と製造業によって生み出されたものが大きく、

国家の繁栄と貧困、経済成長が「農業生産性の違い」によって説明できるとは、言えないと個人的には思います。

やはり「土壌」「農業生産性の違い」だけでは、アステカ人やインカ人と同じ土地に住む、現代のメキシコ人やペルー人が繁栄していない理由が説明できません。




まとめ


中東も新石器革命の時は世界をリードしていました。現代のイラクはかつて最も発展した場所でした。

中世でも中東では最先端テクノロジーが開発。利用されていました。

かつての中東が栄え、現在貧しくなった原因は地理や気候の影響ではありません。

地理や気候では中国経済の長期停滞や急成長なども説明出来ません。


地理や気候の影響が完全にないとは言えないものの、

「持続的な経済成長」や、「国家の繁栄と衰退」を説明するのには、少し不十分、不正確だと思います。

少なくとも、株式投資を考える上では、もっと良い何か別の理論、視点を頼りにした方が良いと私は考えます。

(なお、コモディティーや先物への相関はわかりません)


現時点での個人的な考え

気候や地理、もしくは何らかの形の「地理説」によって、

世界の国の繁栄と衰退、経済成長を説明することはできないと思います。

より詳しく、このテーマについて知りたい方は、下の参考図書がおすすめです。


では「地理説」でなければ、

何が、自足的な経済成長を促し、国家の繁栄と衰退を分けるのでしょう?

次回その④では「文化説」について考えていきたいと思います。


いつも本当にありがとうございます。