収益性について
今回は「収益性ファクター」について
簡単にまとめようと思います。
2006年ファーマーとフレンチは
論文「Profitability Investment and Average Returns 」を発表しました。
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0304405X06001164
この中で、
利益を基準とした収益性の高い企業が、
簿価時価比率と投資を調整した後では
投資家に大きなリターンをもたらすと述べられています。
収益性ファクターについて
売上高から製造原価を差し引いたものを収益性と定義した場合。
1927年~2015年の期間、
収益性の高い企業上位30%のリターンと、
収益性の下位30%のリターンを比較した時、
収益性の高い企業のリターンは、低い企業を
年3.1%ほど上回る結果となりました。
(レイボールらの2016年の論文より)
収益性ファクターが市場平均を上回る確率
収益性ファクターが市場平均を上回る確率(1927~2015年)
1年 63%
3年 72%
5年 77%
10年 85%
20年 93%
収益性プレミアムのシャープレシオは 0.33でした。
昔から当たり前だった収益性の重要性
実は企業の収益性の重要性については、
1930年代からベンジャミン・グレアム等が「証券分析 【1934年版第1版】 」などで指摘していました。
グレアム自身やその弟子たち(ウォーレン・バフェット等)が
何十年にも渡り、重要な判断材料の一つとして利用してしてきたものです。
この事を、リチャード・セイラ―やピーター・バーンスタインは皮肉っています。
意訳「ファーマー、おまえ、それ昔から言われてたやつやん!昔、自分で否定してたやん」
(私もそう思いました笑)
特に個別銘柄に投資をしている投資家のみなさんは、
収益性について軽視しないようにしましょう。
ただ、こうやって数字で検証し、
有効性を証明してくれたことには、
深く感謝と敬意を示したいと思います。
ノビ―マルクスの論文
ノビ―マルクスは、
1962~2010年の期間の米国企業の
売上高から製造原価を差し引くことを定義として、
「収益性」についての検証を行いました。
ポイントをまとめます。
①収益性の高い企業はグロース企業である。(比較的急速に拡大する)
②将来の「成長」だけではなく、利益、CF、「配当」などの有力な予想材料となる。
③収益性のある企業はPERが高めであるにも関わらず、収益性の低い企業より高いリターンを出す。
バリュー投資と収益性ファクター
④収益性に基づいて調整すると、大型かつ流動性の高い銘柄バリュー戦略のパフォーマンスが劇的に向上する。
⑤収益性の高いグロース企業は、収益性低いグロース企業より規模が大きい傾向があり、
収益性の高いバリュー銘柄は、収益性の低いバリュー銘柄より小さいになる傾向がある。
⑥収益率に基づいた戦略はグロース戦略であり、それゆえ、バリュー戦略に対する優れたヘッジになる。
バリュー戦略に収益性を合わせることで、戦略全体のボラティリティを低下させることになる。
個人的な感想
④・⑤はバフェットを連想させられますね。
⑤は長期的に小型バリュー株のリターンが高い傾向にある「理由の一つ」と考えます。
基準として他のファクター(バリュー・サイズ)と合わせて、
「収益率」も採用されている、
バンガード小型バリューインデックスファンド「VISVX」(ETF・VBRの元のファンド)が長期的にS&P500を上回ってきたのも少しうなずけます。

また、⑤に関しては、
今のナスダックが大型グロース企業が牽引する一方で、小型グロース銘柄のリターンがイマイチな事などからもイメージしやすいと思います。
⑥に関しては、証券分析に影響を受けたバリュー投資家なら「知ってる」となると思います。
数字による検証
ただ、こちらもすごく評価したいのは数字でその効果を示してくれたことです。
平均月次リターンのプレミアムと標準偏差
収益性ファクター 0.31% 2.94
バリューファクター 0.41% 3.27
また、2つの戦略を合わせた場合、
双方のリターン(月+0.71%)を狙いつつも
ボラティリティを抑えることが可能となります。
この2つの戦略を組み合わせた場合、
標準偏差は2.89%になりました。
(検証期間中の相関が-0.57だったため)
これはバリュー銘柄とグロース銘柄が、それぞれ異なる時期にパフォーマンスが良くなったり悪くなったりすることがわかりやすい一つの要因としてあげられます。
(その他にも考えらる理由がいくつかあります)
バリューとグロースについての私見
あくまで私個人の意見なのですが、
個人的にはバリュー投資とグロース投資は、
それぞれが完全に独立したものではないと思っています。
例えば、グレアムも言っていたように
ハイテク成長企業でも十分に「割安~安全域~(後のバフェット曰く)適正価格」で買えば、バリュー投資と言えます。
また、配当利回りや「割安か」だけでなく、「収益性」にも注目することで、より高い精度で銘柄を取捨選択できるようになります。
バリュー・グロース
どちらが良いかという議論はナンセンスで、
もし個別銘柄投資をしているなら、
(ポートフォリオ全体でバランスを取りながら)
どちらのいいところも
儲けるためなら、もしくはリスクを抑えるために
ガンガン取り入れ、使っていくべきだと思います。
あくまでも私見ですが、
どちらかに縛られ、視野を狭めることなく、
両方の利点を知り使いこなすのが大切だと思います。
なお、私は使いこなせないので、
バンガードS&P500ETF(VOO)に投資をします。
収益性ファクターは米国外の市場でも有効
ノビ―マルクスは2013年に
1990年7月~2009年10月までの期間で、主要先進国においても収益性ファクターが有効だったいう研究を発表。
「オーストラリア、オーストリア、ベルギー、カナダ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツイギリス、香港、イタリア、日本、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、シンガポール、スペイン、スウェーデン、スイス」
また、
1982~2014年までヨーロッパ15か国と米国調査したところ
収益性ファクターのプレミアムは年平均3.6%
11カ国で市場平均を2%以上上回り、
マイナスとなったのは、ベルギー・フィンランドの2カ国のみ。
さらに米国では4.4%ほど市場平均を上回りました。
まとめ・感想

ジークフリート戦略を学ぶうえで、
クオリティファクターを少し復習しようと思い、
その前段階として、
今回「収益性」について考えてみました。
そうしたら、わき道にそれて少し長くなってしまいました。
正直「グロースVSバリュー」については特に興味がありません(笑)。
すみません。
途中少しだけ私見が入りましたが、
そこはさして重要ではなく、
「収益性」の重要性について、参考にして頂ければ幸いです。
私はバンガードS&P500ETF(VOO)に投資をします。
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今回は「収益性ファクター」について
簡単にまとめようと思います。
2006年ファーマーとフレンチは
論文「Profitability Investment and Average Returns 」を発表しました。
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0304405X06001164
この中で、
利益を基準とした収益性の高い企業が、
簿価時価比率と投資を調整した後では
投資家に大きなリターンをもたらすと述べられています。
収益性ファクターについて
売上高から製造原価を差し引いたものを収益性と定義した場合。
1927年~2015年の期間、
収益性の高い企業上位30%のリターンと、
収益性の下位30%のリターンを比較した時、
収益性の高い企業のリターンは、低い企業を
年3.1%ほど上回る結果となりました。
(レイボールらの2016年の論文より)
収益性ファクターが市場平均を上回る確率
収益性ファクターが市場平均を上回る確率(1927~2015年)
1年 63%
3年 72%
5年 77%
10年 85%
20年 93%
収益性プレミアムのシャープレシオは 0.33でした。
昔から当たり前だった収益性の重要性
実は企業の収益性の重要性については、
1930年代からベンジャミン・グレアム等が「証券分析 【1934年版第1版】 」などで指摘していました。
グレアム自身やその弟子たち(ウォーレン・バフェット等)が
何十年にも渡り、重要な判断材料の一つとして利用してしてきたものです。
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(私もそう思いました笑)
特に個別銘柄に投資をしている投資家のみなさんは、
収益性について軽視しないようにしましょう。
ただ、こうやって数字で検証し、
有効性を証明してくれたことには、
深く感謝と敬意を示したいと思います。
ノビ―マルクスの論文
ノビ―マルクスは、
1962~2010年の期間の米国企業の
売上高から製造原価を差し引くことを定義として、
「収益性」についての検証を行いました。
ポイントをまとめます。
①収益性の高い企業はグロース企業である。(比較的急速に拡大する)
②将来の「成長」だけではなく、利益、CF、「配当」などの有力な予想材料となる。
③収益性のある企業はPERが高めであるにも関わらず、収益性の低い企業より高いリターンを出す。
バリュー投資と収益性ファクター
④収益性に基づいて調整すると、大型かつ流動性の高い銘柄バリュー戦略のパフォーマンスが劇的に向上する。
⑤収益性の高いグロース企業は、収益性低いグロース企業より規模が大きい傾向があり、
収益性の高いバリュー銘柄は、収益性の低いバリュー銘柄より小さいになる傾向がある。
⑥収益率に基づいた戦略はグロース戦略であり、それゆえ、バリュー戦略に対する優れたヘッジになる。
バリュー戦略に収益性を合わせることで、戦略全体のボラティリティを低下させることになる。
個人的な感想
④・⑤はバフェットを連想させられますね。
⑤は長期的に小型バリュー株のリターンが高い傾向にある「理由の一つ」と考えます。
基準として他のファクター(バリュー・サイズ)と合わせて、
「収益率」も採用されている、
バンガード小型バリューインデックスファンド「VISVX」(ETF・VBRの元のファンド)が長期的にS&P500を上回ってきたのも少しうなずけます。

また、⑤に関しては、
今のナスダックが大型グロース企業が牽引する一方で、小型グロース銘柄のリターンがイマイチな事などからもイメージしやすいと思います。
⑥に関しては、証券分析に影響を受けたバリュー投資家なら「知ってる」となると思います。
数字による検証
ただ、こちらもすごく評価したいのは数字でその効果を示してくれたことです。
平均月次リターンのプレミアムと標準偏差
収益性ファクター 0.31% 2.94
バリューファクター 0.41% 3.27
また、2つの戦略を合わせた場合、
双方のリターン(月+0.71%)を狙いつつも
ボラティリティを抑えることが可能となります。
この2つの戦略を組み合わせた場合、
標準偏差は2.89%になりました。
(検証期間中の相関が-0.57だったため)
これはバリュー銘柄とグロース銘柄が、それぞれ異なる時期にパフォーマンスが良くなったり悪くなったりすることがわかりやすい一つの要因としてあげられます。
(その他にも考えらる理由がいくつかあります)
バリューとグロースについての私見
あくまで私個人の意見なのですが、
個人的にはバリュー投資とグロース投資は、
それぞれが完全に独立したものではないと思っています。
例えば、グレアムも言っていたように
ハイテク成長企業でも十分に「割安~安全域~(後のバフェット曰く)適正価格」で買えば、バリュー投資と言えます。
また、配当利回りや「割安か」だけでなく、「収益性」にも注目することで、より高い精度で銘柄を取捨選択できるようになります。
バリュー・グロース
どちらが良いかという議論はナンセンスで、
もし個別銘柄投資をしているなら、
(ポートフォリオ全体でバランスを取りながら)
どちらのいいところも
儲けるためなら、もしくはリスクを抑えるために
ガンガン取り入れ、使っていくべきだと思います。
あくまでも私見ですが、
どちらかに縛られ、視野を狭めることなく、
両方の利点を知り使いこなすのが大切だと思います。
なお、私は使いこなせないので、
バンガードS&P500ETF(VOO)に投資をします。
収益性ファクターは米国外の市場でも有効
ノビ―マルクスは2013年に
1990年7月~2009年10月までの期間で、主要先進国においても収益性ファクターが有効だったいう研究を発表。
「オーストラリア、オーストリア、ベルギー、カナダ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツイギリス、香港、イタリア、日本、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、シンガポール、スペイン、スウェーデン、スイス」
また、
1982~2014年までヨーロッパ15か国と米国調査したところ
収益性ファクターのプレミアムは年平均3.6%
11カ国で市場平均を2%以上上回り、
マイナスとなったのは、ベルギー・フィンランドの2カ国のみ。
さらに米国では4.4%ほど市場平均を上回りました。
まとめ・感想

ジークフリート戦略を学ぶうえで、
クオリティファクターを少し復習しようと思い、
その前段階として、
今回「収益性」について考えてみました。
そうしたら、わき道にそれて少し長くなってしまいました。
正直「グロースVSバリュー」については特に興味がありません(笑)。
すみません。
途中少しだけ私見が入りましたが、
そこはさして重要ではなく、
「収益性」の重要性について、参考にして頂ければ幸いです。
私はバンガードS&P500ETF(VOO)に投資をします。
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